森ビル株式会社

広告を通して、次世代に伝えていきたいこと(第3回)

2009年07月17日

今月のゲスト:アートディレクター 副田高行さん

0907b_img.jpg

広告を作ることで、企業のメッセージを人々に伝えてきた、アートディレクターの副田高行さん。最近ではコピーライターの前田知巳さんと森ビルの企業広告も 手掛けるなど、私たちの記憶に強く印象を残す広告を数多く作り続けている。「いい物づくりをしよう」と、次の世代に伝えたい本音を語った彼の言葉には、日 本をもっと美しくしていきたいという熱い思いが込められていた。

第3回 もっと日本を面白くしていくために伝えたいこと

よく日本に来た外国の人が「東京は面白い」と言うじゃないですか。例えばクリエーターも言うし、映画スターとかがも来ても「東京って何て面白いんだ」と言いますね。
でもそういう風にして今外国の人から言われている面白さって、本当は違うんじゃないかなと思うんです。
例えば街並みにしても、江戸時代の街並みって、絶対きれいだったと思うんですよね。それは建物が、木と紙でできていたから。日本の気候風土に合わせた建物ですが、江戸っていう都市は多分すごく美しくて、しかも人間の関係も、見事に調和していてね。今のような、外国人が来て「何かごちゃごちゃで面白いよね」というレッテルじゃなくて、これからは日本人が持っている審美眼や、しゃれぐあいとか、心のあり方というもので、日本人も心から「本当に東京って面白いだろう?」って言える街づくりをしなくてはいけないんですよね。
大きく言うと、日本という国自体がもう1回やり直すべきというか…。センスはあるのに、みんなが向かう方向をバラバラなままでやってしまうと、やっぱり外国人が来て面白い街なだけになってしまう。それはすごく悔しいなというのがあるんですよね。

これから先の未来をよくするための広告マンとしての役割

これからの人は特に、心から面白いと思える国に自分たちがしていくという意識を持ってほしい。
僕は若いデザイナーの前とかでしゃべるときには、「ここにいる人がみんな、何らかの形で仕事に就いたときに、ある種の意思を持って、『自分たちの国をよくする』とか、『本当に豊かな生活をする』ということを常に考えながら、仕事をするべきだ」と話をするんです。
それが連綿と続いていくかどうかで、この国の将来が、世界に誇れるものになるのかが決まる。対世界として考えても、ただお金だけ出していて「お金だけ持っているんだけれど、何かあいつらチープだよね」と、ばかにされている感じがして。「実はそうじゃないのに」ということがありますね。それがすごく嫌なんです。まぁ広告でやれることというのはもちろん限界はあるのですけれど、いい企業と出合う、いい商品と出合う、そしてそれをきちんとしたコミュニケーションができるようにして生活者に伝えるというのが広告の役割だと思っています。

関連リンク

プロフール

アートディレクター/1950年福岡県生まれ。東京育ち。東京都立工芸高校デザイン科卒。スタンダード通信社、サン・アド、仲畑広告制作所を経て、現在副田デザイン制作所主宰。トヨタ「ECOPROJECT」、サントリー「ウイスキー飲もう気分」など数々の広告を制作。中でもSHARP 「液晶AQUOS」の広告は、発売時より長年にわたり手がけている。朝日広告賞、毎日広告デザイン賞など受賞多数。著書に『副田高行の仕事と周辺』(六耀社)。