森ビル株式会社

変わりゆく東京を、被写体として見つめ続けて(第2回)

2009年07月10日

今月のゲスト:写真家 ホンマタカシさん

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写真家のホンマタカシさんの作品には、東京に関するものも数多く、なかでも六本木やお台場など、変わりつつある都市の風景を好んで被写体に選んでいるとい う。最近では写真教育に興味を持ち、『たのしい写真 よい子のための写真教室』という本も出版。国内外で活躍する彼は、被写体として、作品を発表する場と して、また写真教育を行う地として、東京をどう見ているのか。

第2回 被写体として魅力のある東京とは

六本木周辺の変化してゆく様を撮るというのは僕にとってはすごく大きかった仕事ですね。「東京を撮る」と一概に言っても、例えば今までは歌舞伎町を撮ったり、下町の猫を撮ったりというのが多いと思うんだけれど、そうじゃなくて、僕はいつも変わりつつあるところや新しいところを写真で撮りたいと思っているので、六本木を撮るのは当たり前だし、あと、お台場なども好んで撮っていますね。実際、六本木ヒルズを好んで撮っているのって、僕と篠山さんしかいないと思うんですよ。普通の写真家からすると、六本木ヒルズって、きっとすごく撮りづらいし。「よくないところだ」と言う方が簡単で、「それより麻布十番の居酒屋の方がいいや」というのが普通の感覚じゃないですか。でも、今東京に住んで、仕事をしている写真家としては、やっぱりもっと、その変わりゆくところをあえて撮るという方がよりクリエーティブだと思いますね。
六本木ヒルズを撮影していて思ったのは、六本木ヒルズって名前どおり、本当に丘の上に立っているんだなということ。1回更地にすることによって、丘とか坂とかがはっきりする。東京というのはすごく坂が多くて、坂の街ですよね、僕はそれがすごくいいなと思っています。

東京の好きな場所は?

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HILLS CAST収録風景

被写体としての東京の面白さっていうのは、やっぱりあると思います。都市としての面白さという意味でもそうですが、何年か周期ですごく変化するし。カオスだし、液状的というか、東京独特なものがありますよね。それはすごく写真を撮る上でも魅力的だと思います。ただ写真を撮影するということ自体で言えば、東京はすごく遮光的というか、パキッとしない光なので、すごく撮りづらいんだけれど、それを逆手にとって撮るしかないですよね。僕は結局、子どものころに東京郊外のファミリーレストランみたいなところで食事をして育っているので、東京の好きな所というとそういう新しいのと古いのがまざってる所だと思います。もちろん渋い居酒屋とかも好きなんですけれど、新しいところを否定できないんですよね。

プロフール

1962年東京生まれ。ライト・パブリシティに在籍後、独立。1991年よりロンドンに渡り、ファッション・カルチャー誌『i-D』で活動する。1999年『東京郊外』(写真集、展覧会)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。
主な作品集に『Tokyo and my daughter』(スイス:Nieves)、『きわめてよいふうけい』『東京の子供』『Babyland』(リトルモア)、『Hyper Ballad:Icelandic Suburban Landscapes』(スイッチパブリッシング)、『NEW WAVES』(パルコ)、『TOKYO』(米:Aperture)、『trails』(マッチアンドカンパニー)ほか。