森ビル株式会社

広告を通して、次世代に伝えていきたいこと(第2回)

2009年07月10日

今月のゲスト:アートディレクター 副田高行さん

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広告を作ることで、企業のメッセージを人々に伝えてきた、アートディレクターの副田高行さん。最近ではコピーライターの前田知巳さんと森ビルの企業広告も手掛けるなど、私たちの記憶に強く印象を残す広告を数多く作り続けている。「いい物づくりをしよう」と、次の世代に伝えたい本音を語った彼の言葉には、日本をもっと美しくしていきたいという熱い思いが込められていた。

第2回 健全な企業ありきの、広告を使った正しいコミュニケーション

森ビルの広告を担当するのはやりがいがありますよ。それは要するに、六本木ヒルズというビルを持っている企業としての森ビルは知っているけれど、森ビルという企業がどういう街づくりをしたいかというビジョンは知られていない。そこの部分は、まだほぼ人々とコミュニケーションしていないですから。それを人に伝えて、ちゃんとコミュニケーションするということが広告の役割で、それはすごく大事なことなんです。
結局広告って、その企業の思いが伝わるメディアなんですよ。だからいい加減なものを作ると、それはやはりいい加減にしか世の中には届かない。いくら広告クリエーターが頑張っても、嘘がばれるというか。特に今のような時代になるとなおさら、本当に健全で正しい企業が残り、健全で正しい商品が残る。多分、一時の「つくれば売れる」みたいな、「何でもいいから」という時代は去ったんです。
これからはちゃんと、この国の中に必要な企業と必要な商品と物と、それを正しくコミュニケーションすることで生活者が基本的に豊かになるとか、幸福になるということが究極の目的になって、そのために企業があるという。まず企業がやろうとしていることに生活者が賛同する。そしてそこの商品があったら、それを買うというような、これからはそういう仕組みだと思うのです。

広告の仕事をしていて一番喜びを感じるときは

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HILLS CAST収録風景

アートディレクターって、変わった仕事なんですよ。広告って、基本的に人が見ようと思っていないものですよね。例えば今日新聞を見たとしても、新聞広告は覚えていないでしょう。それだけ、人は広告を見ていないんですよ。だから、ちゃんと見てもらえるものにしなくちゃいけないという僕らの役割は大きいんです。
人が見るかどうかというのは、好奇心を刺激するかということですよね。それは僕らの作家性じゃなくて、企業あってのこと、企業の思いを経てあるもので、その上で僕らがイラストレーターやコピーライターと一緒に「こんな感じで」と提案する。そうしてできたものが、人に見てもらえて、何かを感じてもらえるということは喜びですね。
例えば今回の森ビルの企業広告で言えば、「ああ、東京がこんなふうに変わるのか、それはいいことかもしれないな、楽しいな」というのが残る。それは僕らにとっても喜び。そのためにはやっぱり企業の思いが大事なんです。

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プロフール

アートディレクター/1950年福岡県生まれ。東京育ち。東京都立工芸高校デザイン科卒。スタンダード通信社、サン・アド、仲畑広告制作所を経て、現在副田デザイン制作所主宰。トヨタ「ECOPROJECT」、サントリー「ウイスキー飲もう気分」など数々の広告を制作。中でもSHARP 「液晶AQUOS」の広告は、発売時より長年にわたり手がけている。朝日広告賞、毎日広告デザイン賞など受賞多数。著書に『副田高行の仕事と周辺』(六耀社)。