森ビル株式会社

広告を通して、次世代に伝えていきたいこと(第1回)

2009年07月03日

今月のゲスト:アートディレクター 副田高行さん

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広告を作ることで、企業のメッセージを人々に伝えてきた、アートディレクターの副田高行さん。最近ではコピーライターの前田知巳さんと森ビルの企業広告も手掛けるなど、私たちの記憶に強く印象を残す広告を数多く作り続けている。「いい物づくりをしよう」と、次の世代に伝えたい本音を語った彼の言葉には、日本をもっと美しくしていきたいという熱い思いが込められていた。

第1回 都市に対する美意識と、これからの街づくり

東京に限らず、日本というこの国には「ものすごく猥雑に汚くなっちゃっているな」という印象があるんですよ。日本が持っている気候風土や四季があって、山国で海もあって、自然にも恵まれているんだけれど、人工物が汚い。例えば看板とか、建物、ガードレール、電信柱も。
もともとは恵まれているはずなのに景色が汚いというジレンマがある中で、日本やこの東京が、どうしたらもう少し美的なセンスを取り戻せるんだろうかというのは、アートディレクターとしては常日頃思っています。
そのなかで、森ビルは世の中に、「こういう考え方で街づくりをやっていっている企業なんだ」ということをもっと広告で表現しないといけないですよね。やっぱり街づくりというのは、基本的に住民の理解を得て、賛同してもらって一緒にやっていくことだと思うんですよ。森ビルがやろうとしているのは、自然を残して人工物を地下に入れるという、新しい街づくりの1つの形。それはすごく賛同すべきテーマだと思うんです。

これからは個人レベルでいい物づくりを

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HILLS CAST収録風景

日本はアメリカからやってきた資本主義のあり方や文化を踏襲してきたと思っているのですが、それが本当に日本人の生活とか暮らしとかが幸せになることかというと、ちょっと疑問があるんです。だから今回のリーマンショック含め、世界的な恐慌というのは、ここでひとつ日本という国もリセットしてやり直すチャンスじゃないかと。
本来の日本のよさとか、もともと日本人が持っているDNAとかあるじゃないですか。だから、端的に言うと「いいものづくりを、もう1回しましょう」ということですね。
すべてのジャンルのすべての人が「いいものを作る」という気持ちを持つ。それは僕ら広告マンだったらいい広告を作るとか、企業だったらいい商品を、放送局だったらいい番組を作るとか。「いいものを作る」ということをもっと個人レベルで考えたら、チョイスもいいものをチョイスするはずだし、もうちょっといい国になるんじゃないかな。

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プロフール

アートディレクター/1950年福岡県生まれ。東京育ち。東京都立工芸高校デザイン科卒。スタンダード通信社、サン・アド、仲畑広告制作所を経て、現在副田デザイン制作所主宰。トヨタ「ECOPROJECT」、サントリー「ウイスキー飲もう気分」など数々の広告を制作。中でもSHARP 「液晶AQUOS」の広告は、発売時より長年にわたり手がけている。朝日広告賞、毎日広告デザイン賞など受賞多数。著書に『副田高行の仕事と周辺』(六耀社)。