森ビル株式会社

展覧会と小説を作ることで見えた都市の姿(第3回)

2009年06月19日

今月のゲスト:作家 原田マハさん

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第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2009年に映画化された『カフーを待ちわびて』。著者である原田マハさんは、長くアートの世界に携わり、森美術 館の設立にも関わっていた。好奇心が強いと自身を分析し、小説でも、美術の世界でも「まだまだ伝えたいことがたくさんある」と語る彼女は今、世界を、そし てその中で東京を、どのように見つめているのだろうか。

第3回 まだまだ訴えたいメッセージがつきない

デビューしてから随分書きましたね。どんどん書く力をつける、継続力をつけていくというのは物書きとしては大切なことらしいんです。ですから迷わずに、「今書ける」と思ったらどんどん挑戦していった方がいいんじゃないかなというふうにも思っています。それに、不思議なことで、まだ飽きないんですね。まだ伝えたいことがたくさんあるなというふうに思っていますね。
私、とても好奇心が強くって。それはキューレーターのときもそうだったし、物書きになってからも、そういう側面があるなって自分で非常に意識するんです。本当に、自分の知らないことをまず知ってみたいという気持ちがありますね。そして知ってしまったら、それを書いてみたいというふうに思ってしまうんです。だから、この好奇心が続く限りは、新しいジャンルに挑戦していきたいと思いますし、まだまだ書けるというふうにも思います。

だから、もっとフィールドも広げていきたいなと思います。いろいろな媒体に今挑戦しているところなんですけれども、例えばSNSで連載してみたりとか、携帯小説もやってみましたし、かと思ったら、純文学の文芸誌で書いたりとか。ライトノベルをやってみたりとか。そうやって、いろいろな媒体から声をかけていただくということを考えても、まあ、まだ皆さん、「この作家はどのぐらいの埋蔵量があるのかな?」と思ってくださっているのかな(笑)、それをまた面白がっている自分がいたりするんですね。
それで、例えばライトノベルだったら「ティーンエイジャー向きにやってみたい」と思うし、携帯小説だったら「もっと若い子を対象に書いてみたい」と思いますし、純文学だったら「もしかして純文学をすごく愛して、小説家になりたいと思っている人が読んでいるかもしれない」と思いながら書きますね。
それぞれの読者に向けて、やっぱり訴えたいメッセージというのがありまして、それがなかなかなくならないので、まだ当面は広げていけるかなというふうに思っています。

プロフール

作家/東京都出身。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒。総合商社、森美術館準備室を経て、2002年独立。2003年より国内外の展覧会、シンポジウム、アートコーディネートを手がける。2003年より、カルチャーライターとして執筆活動開始。
2006年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞受賞。
著書に、『一分間だけ』『#9』『花々』(以上宝島社)、『普通じゃない。』『さいはての彼女』(以上角川書店)、『ごめん』(講談社)、『おいしい水』(岩波書店)、『キネマの神様』(文藝春秋)。