森ビル株式会社

展覧会と小説を作ることで見えた都市の姿(第2回)

2009年06月12日

今月のゲスト:作家 原田マハさん

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第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2009年に映画化された『カフーを待ちわびて』。著者である原田マハさんは、長くアートの世界に携わり、森美術 館の設立にも関わっていた。好奇心が強いと自身を分析し、小説でも、美術の世界でも「まだまだ伝えたいことがたくさんある」と語る彼女は今、世界を、そし てその中で東京を、どのように見つめているのだろうか。

第2回 アートの仕事と作家の仕事は“祭りと祈り”

私はキュレーターの仕事を20年ぐらいやったんですけれど、自分の中ではアートの仕事、展覧会の仕事というのは、すごくフェスティバルというか、祭りの要素が強いんですね。すごくいろいろな人が関わって、ワッて盛り上げて1つのものを創り出すという作業なんです。
それに比べると小説を書く作業というのは、割とコツコツと1人で自分の世界の中にこもって書かなければいけないということが多いので、どちらかというと祈りの作業に近いというか…、そういう感じですね。いつも何か祈りながら書いている。「この気持ち、この思いが届けばいいな」と思いながら書いているという感じがします。だから、まあ「祭りと祈り」という、そういう感じです。

文章を書くということ自体は、昔から非常に興味がありました。すごく遡れば、子どものころの夢というのが、画家になることか漫画家になることだったんです。それでティーンエイジャーになってからは漫画を描いたりしていました。あと、自分で小説みたいなものを書いて、それに挿絵を描いたりして。それを授業中にクラスの中で回したりというようなこともしていましたね。それを見て、みんなが泣いたり笑ったりするんですよね。それで、「あっ、絵を描くとかアートというもの、文章を書くっていうこと、そういうクリエーティビティというのは人を感動させることができるんだな」というのを、早い段階に体験しているんです。
でもそのあとに、何かやっぱり自分が絵を描くということよりも、アーティストをサポートして、展覧会をつくっていくというようなことは面白いんじゃないかなということに気がついて。じゃあ、そうするためにはどうしたらいいのかなということで、いろいろ研究したり、いろいろな人と会って話をしたりして、だんだんアートの世界に入っていったというのが、最初の流れなんです。

プロフール

作家/東京都出身。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒。総合商社、森美術館準備室を経て、2002年独立。2003年より国内外の展覧会、シンポジウム、アートコーディネートを手がける。2003年より、カルチャーライターとして執筆活動開始。
2006年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞受賞。
著書に、『一分間だけ』『#9』『花々』(以上宝島社)、『普通じゃない。』『さいはての彼女』(以上角川書店)、『ごめん』(講談社)、『おいしい水』(岩波書店)、『キネマの神様』(文藝春秋)。