森ビル株式会社

村上隆が東京の中と外から見た世界(第3回)

2009年04月17日

今月のゲスト:アーティスト 村上 隆さん

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今までの活動の集大成とも言える展覧会『© MURAKAMI』が約2年間をかけて世界3カ国4箇所を巡回した、日本を代表する現代アーティスト村上隆さん。アートを通して、世界を知る村上隆さんの話は、『© MURAKAMI』で見た世界の“オタク”観や、東京という都市の持つパワーについて、そして、現代芸術のアイコン アンディ・ウォーホルにまで至った。そのどの話題においても、自称“成り上がり”の彼の、冷静で鋭い視線と、そこに秘められた熱い思いが滲んでいた。

第3回 アンディ・ウォーホルの成り上がり精神

プレスの人たちが必ず聞いてくる質問で、「村上さんはウォーホルの影響を受けたと思うけれど、どうですか?」「『ウォーホルの再来』と言われていますよね、ウォーホル、どう思いますか?」というのがありますね。もちろん、僕はウォーホルは大好きですし、ピカソかウォーホルかといえば、やはりウォーホルです。
じゃあ、なぜ僕とウォーホルをつなげるのかというのは、ある観点から見ると、なるほどと思えるところがあります。例えば、ウォーホルとピカソの圧倒的な違いを1つ上げるとすると、まずウォーホルは、本当にとても貧しい家庭から出てきました。そこからの成り上がりで、サクセスストーリーそのものを自分で体現しながら、銃に打たれたり、ムキムキマンになったりいろいろしながら、人生そのものが立身出世物語というところがありました。
ポップというのは、ある種、権威的になるアートに向かってのカウンターだったと思うのです。その意味で、例えば僕なんかは、ウォーホルよりもさらに下。そもそも戦争に負けた日本から成り上がってきたアーティストということで、多分「成り上がり」というコンテクストがとても強かったのかなということを、インタビューを全部終えたあとにハッと気がついて思うに至りました。

日本人がウォーホルを大好きな理由というのは、そういう成り上がり的な文脈というのがタッチするところだと思うんです。その成り上がり的な部分というのが、とても似ているんじゃないかしら。
たださっきも言いましたように、僕としてはウォーホルよりも下の方から成り上がっていますので、「ウォーホルさんなんかと比べられるのは本当に申しわけない」という感じなので、うれしいとか何とかというよりも、ちょっとレベルが違って。まだまだ成り上がっている最中なんで、「チャンピオンになってから比較してください」という気はしています。

プロフール

1962年東京生まれ。アニメや漫画など日本文化をベースにした作品を手掛け、世界でその動向が最も注目されるトップアーティストの一人である。東京芸術大学で日本画科博士号を取得。アーティスト集団Kaikai Kikiの代表。チアマンを務めるアートフェアGEISAIは2009年3月8日で通算15回目を迎えた。現在、海外と日本を往復し、若手アーティストのプロデュース、展覧会のキュレーションを積極的に行っている。