森ビル株式会社

村上隆が東京の中と外から見た世界(第2回)

2009年04月10日

今月のゲスト:アーティスト 村上 隆さん

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今までの活動の集大成とも言える展覧会『© MURAKAMI』が約2年間をかけて世界3カ国4箇所を巡回した、日本を代表する現代アーティスト村上隆さん。アートを通して、世界を知る村上隆さんの話は、『© MURAKAMI』で見た世界の“オタク”観や、東京という都市の持つパワーについて、そして、現代芸術のアイコン アンディ・ウォーホルにまで至った。そのどの話題においても、自称“成り上がり”の彼の、冷静で鋭い視線と、そこに秘められた熱い思いが滲んでいた。

第2回 村上隆が自身のレトロスペクティブショーで見たこと

村上隆です。村上隆回顧展『©MURAKAMI(コピーライト村上)』のツアーが2年間にわたって、ロサンゼルス、ニューヨーク、フランクフルトとツアーしてきまして、最終地点、スペインのビルバオ、グッゲンハイム美術館で、5月31日まで開催しています。
『©MURAKAMI』という展覧会は、ある意味でのレトロスペクティブショーなんですが、僕の彫刻作品、絵画作品、あと新作のアニメーションなどを一堂に会して展示したものです。そもそも、僕の海外のアートシーンでの立ち位置というのは、「ウォーホル以降、アートの概念を拡張させた」という位置ですけれど、特に実物の作品の概念プラス、印刷物やネット上での自分の作品のアイデンティティーということで、トレードマークやコピーライトということを主張したり、そういう部分での自分の作品の拡張というものを非常に集中していたというところで評価されたものの集大成みたいなものです。

ツアー最終章:ビルバオ・グッゲンハイム美術館で

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ビルバオでの『© MURAKAMI』 photo:GION

スペインはですね、ロサンゼルスでのオープニングにちょっと似ていて、とても人々が待ち望んでいたような感触でしたね。あまり僕も詳しくは知りませんけれど、日本のアニメや漫画などが、ものすごくキャッチアップされているお国柄なのかなと思いました。
僕のパーティではロサンゼルスと同じく、僕のオタクみたいな人がいて、大体僕と年格好が同じぐらいのおじさんなんですけれども。世界中オタクは同じで、ものすごいバックパックにいっぱい荷物が入っていて、僕に何枚も何枚もサインさせるような人がいっぱいいました。そういう意味でも、アートというものに、オタクの人たちが来たという試しはあまりなかったと思うのです。
僕の存在価値というか、存在意義というのは、本当にフラットなサブカルチャーな部分まで広げていったということが1つかと思います。それがツアーの最終章に差しかかっているということですかね。

プロフール

1962年東京生まれ。アニメや漫画など日本文化をベースにした作品を手掛け、世界でその動向が最も注目されるトップアーティストの一人である。東京芸術大学で日本画科博士号を取得。アーティスト集団Kaikai Kikiの代表。チアマンを務めるアートフェアGEISAIは2009年3月8日で通算15回目を迎えた。現在、海外と日本を往復し、若手アーティストのプロデュース、展覧会のキュレーションを積極的に行っている。