森ビル株式会社

現代アートは私たちのすぐ近く

2009年04月10日

今月のゲスト:森美術館キュレーター 荒木夏実

araki0904_img.jpg

7月5日まで森美術館で開催されている『万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより』。生活とはかけ離れた、難解なものと思われがちな現代アート。これはそんな意識を変えられたら、という願いの込められた展覧会だ。キュレーターの荒木夏実が直接メッセージを届けます。

『万華鏡の視覚』展の魅力

araki0904_1.jpg
カールステン・フラー「Y」2003
撮影:渡邉 修

『万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより』は、今の現代美術の世界的な、国際的な、アーティストたちの動向というのをこの展覧会だけで見られるような、そういった展覧会です。
本当にインターナショナルな国際選手といいますか、スター選手のようなアーティストたちのコレクションがたくさん集められています。まずこれだけの規模の、非常に大きなインスタレーションも来ますので、これだけ大掛かりなインスタレーションができるスペースというのが、なかなかありません。そしてさらに、現代の私たちの生活とか世界観というものを照らし出すような作品が本当に多いのです。ですから、六本木の東京のど真ん中で、こういった作品に触れることで、日本から東京から、さまざまなことに思いを巡らすというきっかけになれたらいいなと思います。

『万華鏡の視覚』展のみどころ

araki0904_2.jpg
イエッペ・ハイン (Jeppe Hein)
「映す物体 (Reflecting Object)」2006

本当にどの作品も見ていただきたいのですが、『万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより』という展覧会の特徴の1つを示していると思う作品が、イェッペ・ハインという人の作品です。これは銀色の直径50センチの球体が、鏡になっていてキラキラしているのですけれども、このボールというのがブルブル震えたり、勝手にゴロゴロ転がったりするんですね。で、その作品を見ていると、自分の姿もそこに映り込む、自分もその作品の一部になってしまうという作品なんです。
これはオブジェそのものに意味があるのではなくて、見に来た人が、ブルブル震える球体を追いかけたり、あるいはそれから逃げたり、そこに映る自分を見つけたりするコミュニケーションツールとしてのアート作品なんですけれども、そういう観客がいることによって成立する作品がほかにもいろいろあります。
アートというのが、必ずしも、私たちの生活からかけ離れたものじゃないということを、メッセージとして強く訴えていきたいなというふうに思っています。


【開催概要】
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
会期:2009年4月4日〜7月5日
   月・水〜日 10:00〜22:00、火 10:00〜17:00
入館料:一般¥1,500、学生(高校・大学生)¥1,000、子供(4歳〜中学生)¥500
※4/25(土)〜5/10(日)は「お子様無料ウィークス」を実施します。中学生以下のお子様の入館料は無料。

関連リンク

プロフール

森美術館キュレーター。大学卒業後、日本の学芸員資格取得後渡英、博物館学修士号取得。
帰国後、キュレーターに。美術展の企画から作家・作品の出品交渉、空間構成やカタログ作りまで手掛ける。