HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
村上隆が東京の中と外から見た世界(第1回)
2009年04月03日
今月のゲスト:アーティスト 村上 隆さん

今までの活動の集大成とも言える展覧会『© MURAKAMI』が約2年間をかけて世界3カ国4箇所を巡回した、日本を代表する現代アーティスト村上隆さん。アートを通して、世界を知る村上隆さんの話は、『© MURAKAMI』で見た世界の“オタク”観や、東京という都市の持つパワーについて、そして、現代芸術のアイコン アンディ・ウォーホルにまで至った。そのどの話題においても、自称“成り上がり”の彼の、冷静で鋭い視線と、そこに秘められた熱い思いが滲んでいた。
第1回 村上隆個展『inochi』がKaikai Kiki Galleryにて開催
東京はいまや、世界のメガロポリスの中でも、文化の発信基地としては世界ナンバーワンといって過言ではない都市になりました。食文化であっても、オタクカルチャーであっても、あらゆるエリアにおいて成熟しきって、なおかつ安全で、日本人以外にとってはサプライズが必ず隠れている。ものすごい都市になっています。
その中で僕は生まれ育ち、活動しているわけですから、その都市のエッセンスというものを作品の中に封じ込めるためには、その都市でますます生き続けるというか。活動し続けなければエッセンスを奪取できないので。その意味で、東京に住み暮らすことは、とても大事なことです。僕が東京で活動するというのは、ほとんど制作と、あとこういうメディアとの関わりというのがほとんどなのですが。自分の発表の場として2年ほど前から、麻布にある本社ビルの地下にギャラリーをつくりまして、そこで年に数回、自分のプロジェクトを発表しています。
“ものすごい都市”東京でのプロジェクトと、疑義

Courtesy Blum & Poe.
© 2004 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
クリティカルな人間であるならば、どんな場所にいてもその都市に対して「おかしいな」と思うことはあると思います。東京の街の行政の成り立ちに目を移せば、「すっとこどっこいな、本当にコメディーだかコントなんだか…」というぐらいな感じには見えると思います。でも、それは中に生活している人間たちが、さらに上を目指すときに、そういうおかしさというのを是正するべきこと。平たく客観的に見ると、じゃあ例えば「ドバイ、どうなのよ?」と言ったときに、「いやあ、何か、この前のクラッシュでだめになっちゃったみたいよ」という話になる。
東京もそういう話になるかというと、そうではなくて。「いや、もう東京は何だか貧乏に慣れちゃっていて、今では全然関係ないみたいよ」みたいな。そういうタフネスがある街だと思っていますので、東京に対する疑義というのは、客観的に世界の都市と東京を比べるときには意味がないような気がします。
<個展概要>
□Takashi Murakami 「inochi」 @カイカイキキギャラリー
□会期:2009. 4/3(金)〜4/16(木)
□時間:Open:火-土 11:00-19:00 / Closed:日、月
□会場:Kaikai Kiki Gallery(東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1F)
プロフール
1962年東京生まれ。アニメや漫画など日本文化をベースにした作品を手掛け、世界でその動向が最も注目されるトップアーティストの一人である。東京芸術大学で日本画科博士号を取得。アーティスト集団Kaikai Kikiの代表。チアマンを務めるアートフェアGEISAIは2009年3月8日で通算15回目を迎えた。現在、海外と日本を往復し、若手アーティストのプロデュース、展覧会のキュレーションを積極的に行っている。