森ビル株式会社

東京から離れられないその理由(第2回)

2009年03月06日

今月のゲスト:作家 阿川佐和子さん

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「文句があっても、魅力もあるからつい住んじゃう」
自身が生まれ育った東京についてそう話すのは、作家の阿川佐和子さん。小説やエッセイなど著作は数多く、テレビでも活躍している。広島や横浜、ワシントンDCでの生活の経験もある彼女が、一番長く住み続ける東京の魅力とは一体どこにあるのだろうか。東京の良いところ、そして悪いところまで、独自の視点で明るく語った。阿川さんが考える、理想の東京とは。

第2回 森ビルの社長の印象、そして森ビルの力

連載中の対談で、森ビルの社長にもお会いしました。私はいろいろお話を伺っていて、「忍耐強い方なんだ」という印象が強かったですね。最初のアークヒルズが完成するまでに、構想されてから確か20年ぐらいかかっていらっしゃるの。地元の人を説得し、改正に改正を重ね、納得していただいて、それからつくり始めるというようなことを含めるとね。
だから、そんじょそこらでめげない方なんですね。例えば「断じて許さない」みたいな人たちがいても、それは当然、想定した難関である。無理やり「うるせえー」なんて言って広げるということもせず、じっくりじっくり、じわじわじわじわ、「ねっ、いいでしょう?」と言って、最後に「わかったよ」って敵に言わせるまで粘るというお力がおありだというのが、森ビルの力というふうに、私の印象に残りました。
だから、私が稚拙な質問で「一体森さんは東京をどうなさろうとしているんですか?」とか、「何か次々にビルを壊そうとしているんじゃないですか?」とか、意地悪な質問をしてもね、全然動じない。「今度の構想もなかなか頓挫してうまくいかないんじゃないですか?」などと言っても、全然動じない。

人の名前はね、ただついていないと、ときどき思うのです

私は人の名前って、ただついていないと、ときどき思うのです。林野庁の仕事をしてると、森と林が名前についた人がすごく多い気がします。やっぱり森や木に関心や関わりがある方が入省してるのかもしれないし、あるいは、その土地をずっと守って家業を継いでいるという方もいるのだろうけれど。やっぱり山にかかわる人は、山とか森とか林とか木とかそういう名前が多くて。川のそばの人は川の名前が多かったりする。だから森さんは、その名前に誇りを持っていらっしゃるだけあって、東京を森いっぱいにしてくださるだろうと、私は信じています。
現に、近代的なビルやマンションをたくさんお建てになるけれども、同時に植林、緑を育てようということを本気で考えていらっしゃるというところ、私はすごく好きなんです。
都会というのは都会の機能とか役割があるから、何もかもが田舎の生活ができるようなわけにはいかない。けれども、やっぱり自然とか緑というものとバランスよく作っていこうという信念が企業のトップの方にあれば、そういうふうになっていく力になるでしょう。森さんというお名前は伊達で森さんじゃないだろうって、私は思っているのです。

プロフール

作家・タレント/1981年「朝のホットライン」でリポーターを務め、1983年より報道番組「情報デスクToday」のアシスタント。1989年から「筑紫哲也NEWS23」のキャスターを務めた。1992年に渡米し、帰国後「報道特集」のキャスターとなる。著作は数多く、エッセイ「ああ言えばこう食う」で1999年講談社エッセイ賞を受賞。小説「ウメ子」では坪田譲治文学賞を受賞。現在週刊文春にて対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」を連載中。