森ビル株式会社

5周年を迎えた森美術館のこれから

2008年12月22日

今月のゲスト:森美術館館長 南條史生さん

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森タワーの最上階に位置する森美術館は今年、5周年を迎えた。館長として、これまでにベルリン、アフリカ、インドなどへ渡り、各国のアートを東京へと運んできた南條史生。東京の六本木から、新たなアートの可能性を世界へと発信していく。今後日本と世界、東京と世界の都市を印象付ける展覧会を開催し、「世界の中の森美術館」を目指す。

「チャロー!インディア:インド美術の新時代」

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「チャロー!インディア:インド美術の新時代」展

森美術館館長の南條史生です。
現在開催されている「チャロー!インディア:インド美術の新時代」はインドの現代美術を紹介する展覧会です。27組の作家が来て、その中には現場で制作するような作品もありますし、非常にカラフルで、まさに今のインドのエネルギーとか、そういったものが出てくるような展覧会になっています。
現代美術というのは、常にその国の、例えば経済とか社会の状況を反映すると言われているのですね。今のインドというのは、ものすごい勢いで経済成長していて、特にその牽引役になっているのがITビジネスなので、やはりそういったものを反映した美術というものも出てきます。
ですから、テクノロジーアートを使ってインタラクティブ、つまり観客の動きに反応して動くような作品というのものをつくっている人たちが何人かいます。
まさに今回のこの展覧会というのは、今のインドの人たちの生活が、アートを通して垣間見れる、そのような感じの展覧会なのです。
「チャロー」というのはヒンズー語で「行こう」とか「行くぞ」というニュアンスがあります。今回の展覧会は、現代美術で非常に勢いのあるインドを出そうということですから、「チャロー!インディア」「インドへ行こうよ」という、そういう感覚をこのタイトルに込めているんですよ。

5周年を迎えた森美術館のこれから

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「チャロー!インディア:インド美術の新時代」展

ちょうど2008年の10月で、森美術館は5周年になりましたが、次の2、3年は、まだやれていないことを、もうちょっと追求したいと考えています。
やっぱり、次の大きな波が中近東に来るのではないかということで、ずっと私の頭の中には中近東があるのです。中近東、これからきっとすごくなるぞと思っているのです。
例えばアラブ首長国連邦のシャルジャ首長国でビエンナーレが始まっています。ドバイではアートフェア、都市の建設がすごいですね。そして、アブダビではルーヴルとグッゲンハイム美術館を誘致して、これから美術館ブームに入るわけです。そうすると、インフラも整備されて、さまざまな活動が行われる場所になっていくだろうということで、湾岸、特に中近東のあの辺に1つの中心ができる、そこをいち早く取り上げたいと思っています。
さらに言えば、まだ南アメリカもあるし、中央アメリカも面白そうだし、興味としては延々と続くわけです。そういうことを、自由に引用したり、展覧会として実現していけば、極めてダイナミックな美術館になるはずです。ですから、そういうような、今までに存在していなかったような、世界に視野を持った美術館にしていこうと思っています。
「チャロー!インディア:インド美術の新時代」展は、森美術館で2008年11月22日から2009年3月15日までの開催です。

関連リンク

プロフール

2006年11月森美術館館長就任。国際交流基金(1978年〜1986年)、ICAナゴヤ・ディレクター(1986年〜1990年)、ナンジョウアンドアソシエイツ(株)(1990年〜2002年)を経て2002年4月開館準備室より森美術館副館長。これまでの主なプロジェクトとして、第47回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館コミッショナー(1997年)、台北ビエンナーレコミッショナー(1998年)、ターナープ・ライズ審査委員(1998年)、第3 回アジアーパシフィック・トリエンナーレ(オーストラリア)コ・キュレーター、シドニー・ビエンナーレ国際選考委員(2000年)、ハノーバー国際博覧会日本館展示専門家(2000年)、横浜トリエンナーレ2001アーティスティック・ディレクター(2001年)、第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞審査委員(2005年)、第1回シンガポール・ビエンナーレ アーティスティック・ディレクター(2006年)等を歴任。