HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
東京を離れた今だから見える、都市の姿(第3回)
2008年12月18日
今月のゲスト: 細川護熙さん

新聞記者、県知事、内閣総理大臣を歴任し、これまで内外から東京、そして日本を見つめてきた細川護熙さん。政界を引退後は神奈川県湯河原に住まいを移し、陶芸をはじめ、書道や絵画、庭いじりなどしながら静かな日々を過ごす。東京を離れた今、改めて彼の目に映る東京の姿とはどんなものなのか。
ゆっくりと静かに、東京を語る。
第3回 日本の街づくりへの想い

政治の世界を退いて、遠くにみえる東京は、だいぶよくなってきたと思います。森ビルの良いところは、魅力的なランドマークになっているということだと思います。六本木ヒルズのように、ランドマークを拠点にして街が広がり、活性化し魅力的なポイントができてきていますから、そういうランドマークが増えたら、もっとずっといい都市になると思いますね。
私が熊本の知事をしていたころに一番街づくりというものに関心があって、随分いろいろなことをしてきました。日本には国土利用計画法を初めとして、街づくりに関係のある法律、都市計画法や、農業振興地域制度、街路整備事業など、いろいろな法律がありますが、これらは有機的につながって機能していないものですから、非常に街づくりがやりにくいわけです。
ヨーロッパの街は、建物が町並みに溶け込んで、それぞれの通りに歴史的な名前がついていて、歴史の連続性や街づくりがきちんとなされていると感じます。
日本の道は「256号線」とかつまらない数字だけがついていたりする。昔は日本でも、歴史の連続性を感じられるような「塩の道」「油の道」とかいろいろな名前が付けられていました。つまり、歴史の連続性を断ち切ってきたということになりますね。これは東京に限らず、日本全国において言えることだと思いますが、非常に淋しいことですね。京都とか奈良には、まだ随分残っているけれど、やはり電信柱はたくさん立っているし、汚い看板もたくさんある。例えば、奈良の朱雀通りに行くと、「本当にこれが朱雀通りなのかね?」と思うような、そういうところがありますからね。
これからの日本は、歴史の連続性、文化的な価値を大事にして、それを踏まえて街づくりをきちんと考えていったら本当に魅力的なものになるんだと思います。そのためには、個々の法律が有機的につながり、もう少し柔軟に街づくりをする仕組みができれば、もっとすばらしい街、世界的にみて魅力のある日本になると思いますよ。
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プロフール
1938年、東京都生まれ。朝日新聞記者を経て、衆参議員、熊本県知事、日本新党代表、内閣総理大臣を歴任。政界引退後、神奈川県湯河原の「不東庵」にて作陶、書、水墨、茶杓作り、漆芸などを手がける。財団法人永青文庫理事長。著書に『不東庵日常』(小学館)、作品集『晴耕雨読』(新潮社)、『ことばを旅する』(文藝春秋)など。