森ビル株式会社

「島耕作」と、都市を見つめる(第5回)

2008年11月28日

今月のゲスト:漫画家 弘兼憲史さん

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会社員から漫画化への転身。代表作「島耕作」シリーズには、自身のサラリーマン生活をもとに、主人公がキャリアアップしていく様子がリアルに描かれている。島耕作は、サラリーマンたちが憧れる有望なビジネスマンであることは言うまでもない。
これまで作品の中で多くの都市を描き続けてきた弘兼憲史さんが、東京を見つめ、感じることを語りだす。

第5回 弘兼憲史と「島耕作」の25年

「島耕作」はもう25年間続いているのですが、僕の漫画家人生の25年の横に、もう1人並行してサラリーマン「島耕作」の25年があるわけです。課長から社長にまでなっているので、自分自身が経験しているのと同じような感じもやや、ありますね。
そして確実に1年ずつ二人とも年をとっていて、35歳からスタートした「島耕作」はもう61歳になっているわけです。その間に、現実に僕の仲の良い友人たちがどんどん出世していく。そして現実の彼らに合わせて、例えば、友人Aが部長になったから、「島耕作」も部長にし、友人Bが取締役になると、「島耕作」も取締役にし、友人Cが、大企業のトップになったから、「島耕作」もトップにしようかなと。常に何か、自分や自分の環境をヒントにしながらつくっています。
そしてその出世にあわせて、自分自身も勉強もしなくてはならないわけです。例えば、取締役になるとき、会社によってシステムは異なりますが、とりあえず一回会社を退職して雇用関係を切って、その後、委任関係という形式で、取締役として就任するのですけれど、その辺の法的なところはわからない部分なので、担当編集者に『取締役の心得』といった類いの本を買ってきてもらいます。サラリーマンでもないのですけれど、一応自分が取締役になったつもりで、そういう本を隅から隅まで読んで、法的なこととかを頭にたたき込まなければいけない。そういう作業も漫画を描きながら同時にやったという、面白い人生ではあるなという気がしますね。二つの人生を生きているという気がします。
いま、これだけリアルタイムに漫画と世の中の展開が重なってくると、「この先、『島耕作』はどのような展開になるのか」と聞かれることもあります。
いままだ先の事はわかりませんが、これから伸びる国を考えれば、中国、インド、そしてこのあとはロシア、ブラジルあたりのというBRICS諸国に取材に行ってみようかなという計画は立てています。

プロフール

1947年9月9日生まれ。山口県出身。早稲田大学法学部卒業。松下電器産業販売助成部に勤務。同社を退職後、1974年に漫画家としてデビュー。 1985年に『人間交差点』で第30回小学館漫画賞一般向け部門、1991年には『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞一般部門を受賞。2000年には『黄昏流星群』で第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、同作では2003年に第32回日本漫画協会賞大賞など数々の賞を受賞した。2007年にはその功績が認められ、紫綬褒章を受章する。その他の代表作に『加治隆介の議』『ハロー張りネズミ』など。1983年から始まった代表作「島耕作」シリーズは、2008年に社長就任を迎え、さらなる飛躍のときを迎えている。