森ビル株式会社

政治と秋刀魚、そして、東京の話(第3回)

2008年09月21日

今月のゲスト:コロンビア大学教授 ジェラルド・カーティスさん

0809_img.jpg

最初の訪日から、45年。日本政治を現場から研究し、いまや、歴代首相、そして、オバマ大統領候補まで、彼の意見には耳を傾ける。カーティス教授の語る、日本の政治と日本人、そして、ベストセラー『政治と秋刀魚』。

第3回 アカデミーヒルズでの講演

0809_3_1.jpg
アカデミーヒルズでの講演の様子

東京にいる間、いろいろな場所で定期的に講演をするのですが、やはりアカデミーヒルズで講演すると楽しいのです。なぜかというと、例えば会社で講演をするときにはその会社の人たちが「会社のために講演が役に立つかもしれない」と一生懸命聞いてくれるでしょう。政治家を前にした講演では、政治の話をすると、みなさんプロですから、関心はそれだけにあります。でも、アカデミーヒルズでの講演を聞きに来てくれる人たちは会社も仕事も関係なくひとりの個人として興味があり、自分のためになると思って聞きに来るのですね。とても熱心に聞いてくれて熱意が伝わってくる。だからこちらも一生懸命話すようになるんですね。
六本木ヒルズでは3年間程講演をしているのですが、毎回いらしてくださる常連の方もできました。その方が友人に話して、また新しい人が入ってきたり。自分だけのためであって、組織のためではない、これは非常に大事なことだと思います。アカデミーヒルズはそういった人たちの集まりなんですね。自分の知識をもっと深め、広げる目的で集まっているから、他にはない特別な活気が六本木ヒルズやアカデミーヒルズにはあるんです。
アカデミーヒルズで話すことと、他で話すことは基本的にはあまり変わりはありません。でも何故かアカデミーヒルズでは非常にリラックスした気分になります。一方的に話してはいるのですが、対話になるんですよ。1時間から1時間半の講演の後に質疑があるのですが、まず部屋がとてもいいんですね、みんなの顔が見え、そして部屋もきれいです。とにかくみんな熱心だから、こちらもリラックスして、できるだけ面白く、わかりやすく話をする気持ちになるんですね。
日本人にとって、組織から抜け出し、仕事とは関係のない近い年代の人たちと知り合い、興味のあることを勉強できる、そういった雰囲気があるというのはとても貴重なところだと思います。
アカデミーヒルズにはいろいろ面白い人たちが集まります。講演していいと思うのは、講演すると必ず自分のためにもなるんですね。質問の内容で「なるほど、彼はこういうことに問題意識があるのか」と、その問題意識を知ることは、日本の専門家として、とても大事なことなんです。顔を見ながら話すので、「この話はしなくてもいい」というような顔をされることもあれば、「へえ、これは初めて聞いた話だ」と、とても感心する顔をされることもあります。それを見ながら話していると、日本のことをもっと知ることができるんですね。

大統領選挙の話をするのが楽しみ

そして、今年の11月にあるアメリカ大統領選挙には非常に関心があります。私も新しい大統領がいいアジア政策をとるように助言をしたりしています。ちょうど秋の間だけコロンビア大学で教えているので、ちょうど大統領選挙終了後の12月までニューヨークにいます。その大統領選挙のことも、日本人の読者のために、ものを書いて伝えたいと思っています。来年東京に戻ってきたら、アカデミーヒルズで「大統領選挙はどういうものだったか」という話をするのを楽しみにしています。

プロフール

ジェラルド・カーティス(Gerald L.Curtis)
コロンビア大学教授
1940年ニューヨーク生まれ。1962年ニュー・メキシコ大学卒業。1964年コロンビア大学修士課程終了。1969年同大学博士号取得、1968年からコロンビア大学で教鞭をとり、現在コロンビア大学政治学教授、早稲田大学客員教授。1973年から91年まで、コロンビア大学東アジア研究所長を12年間務める。慶応大学、政策研究大学院大学、コレージュ・ド・フランス、シンガポール大学など客員教授を歴任。中日・東京新聞の客員及びコラムニストのほか、新聞、テレビなど内外のマスコミで活躍。
三極委員会委員、米外交評会委員、米日財団理事。大正正芳記念賞、中日新聞特別功労賞、国際交流基金賞、旭日重光賞を受賞。主な著書に『代議士の誕生』、『日本型政治の本質』、『日本政治をどう見るか』、『永田町政治の興亡』、『政治と秋刀魚』など。