森ビル株式会社

日本初上陸、アネット・メサジェの世界

2008年08月15日

今月のゲスト:森美術館 アーティスティック・ディレクター 逢坂恵理子さん

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絵、写真、ぬいぐるみ、刺繍など、日常の素材を用いて、人間の奥深いテーマを紡ぎだす、フランスの現代アーティスト、アネット・メサジェが日本で初の大規模な個展を開催。日本だけの特別企画も予定され、世界が注目する展覧会をご紹介します。

日常品を用い、創作活動を行ってきたメサジェ

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《噂》2000-2004年
マラン・カーミッツ・コレクション、パリ
Photo: Marc Domage

森美術館、アーティスティック・ディレクターの逢坂です。
アネット・メサジェというアーティストの名前を聞いて、「ああ、あの人だな」とわかる日本人はそう多くないと思いますが、メサジェさんはすでに欧米の美術館で非常に評価の高い、60代の女性アーティストです。
彼女は1970年代前後から日常の身の回りの物を使って作品をつくってきたという経緯があり、当時としては非常に珍しい作品のつくり方をしていたアーティストでした。
今、彼女がやってきたことに、ようやく時代が追いついてきたかなと思います。家の中にある鉛筆や、手袋、ぬいぐるみ、写真の切り抜き、アルバムだとか、そういったものを本当に不思議な作品に変容させています。日常の物が異世界に飛んでいけるような作品をつくっているので、六本木ヒルズの森美術館で展覧会を開催するには面白いのではないかなと思っています。

ダイナミックな森美術館ならではの展示

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《残りもの(家族II)》2000年
MAC/VAL, Musee d'art contemporain, du Val-de-marne,
Vitry-sur-Seine/Photo: Jacque Faujour

彼女は2005年の第51回ヴェネチア・ビエンナーレのフランス館の代表アーティストとして、『カジノ』という作品を出品し、金獅子賞という最高の賞を受賞しています。
その『カジノ』の展示の中で出品された一番大きなインスタレーションを今回メインの作品として紹介します。その展示の仕方が森美術館ならではのユニークな展示となっています。作品をよく見渡せるように、展覧会場に橋を架けることにしています。このような大掛かりな設えは、多分、公立美術館では予算的な壁もあり、なかなか難しいと思います。
森美術館の場合は、毎回どの展覧会も、森美術館ならではの展示を、キュレーターと展示デザイナーが一緒になって考え、ダイナミックな空間をつくっています。これは本当に森美術館ならではだと思います。
「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」森美術館で8月9日〜11月3日まで開催いたします。どうぞお越しください、お待ちしております。