森ビル株式会社

世界の子供たちとリズムを刻む理由(第3回)

2008年08月03日

今月のゲスト:ミュージシャン 渡辺貞夫さん

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世界中を飛び回り、世界中の人々に音楽の素晴らしさを伝えるミュージシャン渡辺貞夫。六本木という場所に居を構え、30年以上経つ、正真正銘の六本人である。彼の語る、音楽と都市、そして子供たち。六本木が音の聞こえる街になればと願いをこめて。

第3回 刺激を与えてくれるミュージシャンとの出会い

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愛知万博での様子

2005年に開催された愛知万博で、僕は日本政府館の監督をしました。そこでは地球の共通言語である音楽を通じて、アメリカ、ブラジル、セネガル、ポルトガルから集まった青少年たちや日本の子ども達と大交流する、“ジャパンウィーク”や“地球サウンド”といったイベントをプロデュースしました。
僕はずっと毎年1枚アルバムをつくってきたのですが、その時は非常に忙しくて、アルバムをつくるチャンスがなかったんです。「まあ、1年ぐらいいいか」ということでしたが、その後もなんだかずっと忙しさが続いています。ですから、スタジオに入ってレコーディングをする余裕がないので、クラブイベントのライブアルバムを出しています。やはり「いいパートナーを見つけてスタジオに入りたいな」とか、「新しいアルバムをつくりたいな」というのが、僕が今一番望んでいることです。

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リチャード・ボナとのライブアルバム 「One For You -Sadao & Bona Live」

アルバムのテーマやアルバムを作るパートナーとの「いい出会い」を求め、色々な人とつき合ってもらってきた感じですね。新鮮で、僕に刺激を与えてくれるようなミュージシャン、例えば割と新しい僕のアルバムの中では、カメルーン出身のリチャード・ボナというアーティストとの出会いなどがそうですね。彼との出会いのような「いい出会い」が欲しいなと思っています。
音を聞いて、出会った瞬間「こいつかも」と思えるような、そういう人が欲しいんですよ。アルバム1枚つくるぐらいの曲はたまっています。ただ、たまっているといってもアルバムをつくった時点でもう古くなっていますからね。いい出会いがあった時にまた新しく曲をつくるということで、人との出会い、特にミュージシャンたちとの出会いを僕はいつも求めています。

「ただいま」と帰りたい街、六本木

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数々のショップが並ぶ六本木ヒルズ

外に飛び出さなければ出会いはないのですが、東京にいると僕はあまり出歩かないんです。仕事でスタジオに行ったりはしますが、東京の街の中をウロウロするというのはほとんどありません。ただ、毎月のように1週間から10日程は仕事で地方都市に行っていますから、そうした小さい旅は毎月やっているのですけれど。
僕は六本木に住んでいますが、六本木の住み心地は、非常にいいです。一歩外に出れば、もう家の前は高速道路が走っていてうるさいですし、窓を開けると外の騒音が聞こえてきますけれどね。ただ、非常に便利なんですよ。あらゆるものが身近にあって、全部歩いて済んでしまう。
そして「人々が動いている」という状況。僕は前に「街が生きている」と言いましたけれど、そういう環境が僕は好きです。そういう中にいるから、静かな自然の中に入った時のありがたみというのを余計感じるので、どちらも大切ですね。ただ、普段の生活は仕事柄どうしても、自然の中の田舎よりは東京ですね。僕の仕事場は千葉県の森の中あるのですが、もう3、4年行っていないのかな。行く暇がなくて、ピアノがかわいそうなんですけれど。
六本木は、お店や、おいしいものがたくさんあり、非常に便利な場所です。だから「ただいま」と帰ってきたくなる街は、やはり六本木ですね。食べることは楽しみの1つですから、おいしいお店がたくさんある六本木は、何より慣れた場所ですし、非常に猥雑な場所ではありますけれど、僕は好きですね。

プロフール

1933年、栃木県生まれ。高校卒業後、上京。アルトサックス・プレイヤーとして数多くのバンドのセッションを経て、1962年米国ボストンのバークリー音楽院に留学。
日本を代表するトップミュージシャンとしてジャズの枠に留まらない独自の音楽性で世界を舞台に活躍。写真家としての才能も認められ6冊の写真集を出版。2005年愛知万博では政府出展事業の総合監督を務め、音楽を通して世界平和のメッセージを提唱。