森ビル株式会社

谷村教授の上海レポート(第5回)

2008年06月27日

今月のゲスト: 谷村新司さん

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「昴」を中国の曲だと思っている中国の人も少なくないとか。80年以上の歴史を持つ上海音楽学院の初の外国人教授に就任した谷村さん。
中国を愛し、中国の人に愛され続けるアーティストが語る、中国、アジア、そして音楽への熱い思いです。

第5回 上海万博でのステージ開放の夢

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移り変わる上海の景色に想いを巡らせる

3月に上海万博の親善大使に任命されました。僕とコシノジュンコさん、福原愛さんの3人です。
これから上海万博の委員会の方や、日本の方たちといろいろな話、素敵な話をどんどんつくっていくために、やれるだけのことはやりたいと思っています。
その中でも、以前からやりたかったことが1つあります。1970年の大阪万博のとき、僕らは二十歳くらいでアマチュアバンドをやっていました。そのとき大阪万博のカナダ館が水上ステージをつくり、アマチュアに開放してくれたのです。僕らはそこで歌うことができ、大きなきっかけをたくさんもらえました。大阪という場所で、カナダのパビリオンがそういうことをしてくれたことが、僕らにとってとてもうれしい出来事だったのです。
ですから上海万博でも、何人(なにじん)であるかは関係なく、音楽を目指している若い人たちが発表やパフォーマンスができる、そういうステージを是非つくってほしい、それを何がなんでもお願いしたいといつもトップには申しあげています。

人の心に通じる音楽

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変らない上海の景色に思いを馳せる

上海との縁はまだまだ続いていきそうです。上海の好きなところは「人なつっこいところ」でしょうか。僕は大阪生まれなのですが、大阪人と上海人は、とても似ています。皆気さくで、いつでも忙しそうに動いており、商売が大好きで、ちょっと打ち解けてくると、すごくいいやつが多いのです。だから上海にいてもあまり疲れないような気がします。本当に「人が生きている」のです。日本の映画『三丁目の夕日』のように、これから高度成長期に入っていく時代の、自分たちがなくしてしまった大切なものが、まだ上海には残っている部分が多いと感じます。

実践を通じて感じる授業

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何気ない日常こそが、かけがえのない景色

大学では一緒に行動できる先生でありたいと思っているので、教室で話して教えるだけではなく、実際に一緒にやる、パフォーマンスをするようにしています。実践を通じて彼らが感じてくれるように動いていければいいと思っています。5年後10年後に、売れたCDの枚数やお金だけのことではなく、人の心に本当に長く愛されるような、そんな作品を作ってくれる子たちがきっと出てくると、僕は信じています。

プロフール

1971年、堀内孝雄とアリスを結成。1972年3月「走っておいで恋人よ」でデビュー。5月に矢沢透が参加。「冬の稲妻」「チャンピオン」など数多くのヒット曲を出し、1981年に活動停止。ソロ活動としては、「いい日旅立ち」「昴」「サライ」など、日本のスタンダード・ナンバーともいえるヒット曲を世に送り出す。1988年からの3年間はロンドン交響楽団、国立パリ・オペラ座交響楽団、ウィーン交響楽団プロジェクト(V.S.O.P)と共演。長年に渡りライフワークとして続けているアジア諸国のアーティストとの交流、そして若手の育成に貢献し、その発表の場作りに尽力している。
2004年3月に上海音楽学院・常任教授に就任。現代音楽の授業を通して中国の若者たちにPOPカルチャーを伝えるための活動を始める。同年11月、1984年から谷村新司、チョー・ヨンピル、アラン・タムによってスタートしたPAX MUSICA (音楽による世界平和)の20周年イベントとして、「PAX MUSICA SUPER 2004」を中国上海大舞台にて開催。
2005年9月には、その想いを次世代に伝えるために”愛・地球博 アジアPOPフェスティバル「PAX MUSICA NEXT 2005」をプロデュースし、アジアの若手アーティスト達と共演。
2006 年9月にはJR西日本DISCOVER WESTキャンペーンのテーマソングとして、マキシシングル「風の暦」をリリース。同年10月、奈良・東大寺大仏殿前にて「谷村新司 NATURE LIVE〜夢人 ユメジン〜 in東大寺 collaborated with 千住明」を開催。日中の少年少女合唱団と共に「夢人〜ユメジン〜」を初披露。
2007年3月にはカルチャープログラムとして、第一期「ココロの学校〜音で始まり、歌で始まる〜」を東京国際フォーラムにて、ココロの先生として竹中平蔵さん、角田信朗さん、渡辺美里さんをお招きし、3日間にわたり開校。同年4月には5年ぶりとなるフルアルバム「オリオン13」をリリース。同年4月、あいち子ども芸術大学学長に就任。同年5月には国際連合麻薬・犯罪事務局(UNODC)、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」からの依頼で薬物乱用防止キャンペーンソング「ギーター」を制作。同年9月、マキシシングル「夢人〜ユメジン〜」をリリース。自身初のNHK「みんなのうた」をはじめ、「24時間テレビ30」チャリティーソングなどを収録。同年9月、南京芸術学院の名誉教授に就任。日中国交正常化35周年記念、日中文化・スポーツ交流年の認定事業として開催された大型演唱会「日中携手・世紀同行 2007」in上海、南京を成功させる。