森ビル株式会社

谷村教授の上海レポート(第4回)

2008年06月20日

今月のゲスト: 谷村新司さん

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「昴」を中国の曲だと思っている中国の人も少なくないとか。80年以上の歴史を持つ上海音楽学院の初の外国人教授に就任した谷村さん。
中国を愛し、中国の人に愛され続けるアーティストが語る、中国、アジア、そして音楽への熱い思いです。

第4回 ジャンル・国を超える『It's only music』

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上海音楽学院の生徒達と共に音楽を伝える

いま、日本の音楽教育はとても遅れていると思います。「ジャンル」という音楽の分け方がありますが、これ自体にあまり意味がないということを、20年ほど前からずっと言い続けています。
クラシックの人もポップスの人もどちらも『音楽』……。「ジャンル」という分け方をしている限り、一番大切なものは絶対に見えてこないと思うのです。
僕はこれまで世界中のいろいろな国、場所で歌い、様々な人と出会ってきました。そこにはジャンル分けするならクラシックの方もいたし、ポップスの方、シャンソンの方、オペラの方、民謡の方、いろんな国のいろんな人たちがいましたが、みんな一緒に『音楽』をやっています。そう、『It's only music』なのです。

長く愛される音楽がクラシックとなる

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ステージの合間、上海の街角にて

クラシックというのは、実は出てきたときはみんなポップスなのですが、長く愛されることで、クラシックと呼ばれる。それこそが、実はクラシックの定義だと僕は思っていて、日本ではそのことにまだ気づかず、形だと思っている方が沢山います。『その音楽がどれだけ人の心を動かし、長く愛されてきたか』ということが、『クラシック』と呼ばれる意味であるとこれから出会う人たちに伝えていきたいと思っています。
1990年にウィーンの交響楽団からのピックアップメンバーで構成されたV.S.O.Pと一緒に作り上げたアルバムを発表するためにコンツェルトハウスでリサイタルを開いた事がありました。
僕の中では、ポップスとクラシックが融合した瞬間だったし、日本語の歌に耳を傾けてくれたウィーンの人たちから「いい音楽だった」という言葉をもらった時に、「ああ、音楽ってジャンルじゃないんだな」と実感をしました。そして同じ感覚を、旅をして人と音楽に触れるたびに、鮮明に思い出します。

プロフール

1971年、堀内孝雄とアリスを結成。1972年3月「走っておいで恋人よ」でデビュー。5月に矢沢透が参加。「冬の稲妻」「チャンピオン」など数多くのヒット曲を出し、1981年に活動停止。ソロ活動としては、「いい日旅立ち」「昴」「サライ」など、日本のスタンダード・ナンバーともいえるヒット曲を世に送り出す。1988年からの3年間はロンドン交響楽団、国立パリ・オペラ座交響楽団、ウィーン交響楽団プロジェクト(V.S.O.P)と共演。長年に渡りライフワークとして続けているアジア諸国のアーティストとの交流、そして若手の育成に貢献し、その発表の場作りに尽力している。
2004年3月に上海音楽学院・常任教授に就任。現代音楽の授業を通して中国の若者たちにPOPカルチャーを伝えるための活動を始める。同年11月、1984年から谷村新司、チョー・ヨンピル、アラン・タムによってスタートしたPAX MUSICA (音楽による世界平和)の20周年イベントとして、「PAX MUSICA SUPER 2004」を中国上海大舞台にて開催。
2005年9月には、その想いを次世代に伝えるために”愛・地球博 アジアPOPフェスティバル「PAX MUSICA NEXT 2005」をプロデュースし、アジアの若手アーティスト達と共演。
2006 年9月にはJR西日本DISCOVER WESTキャンペーンのテーマソングとして、マキシシングル「風の暦」をリリース。同年10月、奈良・東大寺大仏殿前にて「谷村新司 NATURE LIVE〜夢人 ユメジン〜 in東大寺 collaborated with 千住明」を開催。日中の少年少女合唱団と共に「夢人〜ユメジン〜」を初披露。
2007年3月にはカルチャープログラムとして、第一期「ココロの学校〜音で始まり、歌で始まる〜」を東京国際フォーラムにて、ココロの先生として竹中平蔵さん、角田信朗さん、渡辺美里さんをお招きし、3日間にわたり開校。同年4月には5年ぶりとなるフルアルバム「オリオン13」をリリース。同年4月、あいち子ども芸術大学学長に就任。同年5月には国際連合麻薬・犯罪事務局(UNODC)、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」からの依頼で薬物乱用防止キャンペーンソング「ギーター」を制作。同年9月、マキシシングル「夢人〜ユメジン〜」をリリース。自身初のNHK「みんなのうた」をはじめ、「24時間テレビ30」チャリティーソングなどを収録。同年9月、南京芸術学院の名誉教授に就任。日中国交正常化35周年記念、日中文化・スポーツ交流年の認定事業として開催された大型演唱会「日中携手・世紀同行 2007」in上海、南京を成功させる。