HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
谷村教授の上海レポート(第3回)
2008年06月13日
今月のゲスト: 谷村新司さん

「昴」を中国の曲だと思っている中国の人も少なくないとか。80年以上の歴史を持つ上海音楽学院の初の外国人教授に就任した谷村さん。
中国を愛し、中国の人に愛され続けるアーティストが語る、中国、アジア、そして音楽への熱い思いです。
第3回 中国で学んだ「音楽の原点」

中国との交流はもう20年以上になります。その中で「何もないのが原点だ」ということを教えられました。
例えば、今の日本のアーティストもそうなのですが、メジャーになってくると、ステージに行けば既に照明があり、音響が準備され、全てを車が運んでくれてということが当たり前になっています。自分もそれをずっと経験してきました。ところが上海に行き、いわゆるアマチュアの学生たちと一緒にものをつくっていくと、照明がなかったらホールの電気つけっぱなしでOKですし、音響が間に合わなかったら生で歌えばいいのです。
中国との交流は、自分をそういった原点に戻らせてくれ、本当に怖いものは何もないと思わせてくれました。どこで、どんな状態でも、そのときにやれるベストをやればいいということを教えられたのです。着飾れないから、裸のままの自分がちゃんと出せる。そんな状況でいつもいたいと思います。
「愛・地球博」のときに「アジアンポップフェスティバル」というイベントをプロデュースさせていただき、アジア各国から才能のあるプロの若手アーティストがたくさん来てくれました。
そんな中に、上海音楽院の学生をアマチュアとして1組だけ出演させました。ところがアマチュアの彼らが一番楽しそうにやっているように見え、それがとても大事だと感じたのです。プロになると本当に楽しんでいる人が少なく、やらなくちゃいけないと思ってやる人が増え、それはもう音楽の本質とはずれていると思わずにはいられません。
“ミュージックビジネス”と“ビジネスミュージック”の違い

先日、『アジアミュージックマーケット』という大きなプロジェクトが恵比寿でありました。そのときに講演を頼まれたので、「耳に痛いことを言ってもいいですか?」と確認してから話をしました。「いい音楽があって、それをたくさんの人に広めるためにビジネスが成立していく、これは“ミュージックビジネス”といいます。これはありです。でも、今は“ビジネスミュージック”が圧倒的に増えてきています。ビジネスがまずあって、そこに音楽を当て込んでいくのです。これは主客転倒で、大変なことだと思います。いい音楽をつくるということにアーティストは専念するべきで、そうではない状況が長く続きすぎているのです。皆さんはどう思いますか?」といった内容で、100人程の方たちに話をしました。ただ、そういったことは、音楽の世界だけではないのかもしれません。
幸運な出会い

8年ほど前に上海にコンサートに行ったとき、中国のある人物と出会い、意気投合しました。感じているものや目指しているもの、中国が目指すべきものについて、彼も深く感じていて、そこから付き合いが始まりました。
今彼は、我々のスタッフとして動いてくれています。そういう出会いをもらえたことは、とても幸運だったと思っています。
関連リンク
プロフール
1971年、堀内孝雄とアリスを結成。1972年3月「走っておいで恋人よ」でデビュー。5月に矢沢透が参加。「冬の稲妻」「チャンピオン」など数多くのヒット曲を出し、1981年に活動停止。ソロ活動としては、「いい日旅立ち」「昴」「サライ」など、日本のスタンダード・ナンバーともいえるヒット曲を世に送り出す。1988年からの3年間はロンドン交響楽団、国立パリ・オペラ座交響楽団、ウィーン交響楽団プロジェクト(V.S.O.P)と共演。長年に渡りライフワークとして続けているアジア諸国のアーティストとの交流、そして若手の育成に貢献し、その発表の場作りに尽力している。
2004年3月に上海音楽学院・常任教授に就任。現代音楽の授業を通して中国の若者たちにPOPカルチャーを伝えるための活動を始める。同年11月、1984年から谷村新司、チョー・ヨンピル、アラン・タムによってスタートしたPAX MUSICA (音楽による世界平和)の20周年イベントとして、「PAX MUSICA SUPER 2004」を中国上海大舞台にて開催。
2005年9月には、その想いを次世代に伝えるために”愛・地球博 アジアPOPフェスティバル「PAX MUSICA NEXT 2005」をプロデュースし、アジアの若手アーティスト達と共演。
2006 年9月にはJR西日本DISCOVER WESTキャンペーンのテーマソングとして、マキシシングル「風の暦」をリリース。同年10月、奈良・東大寺大仏殿前にて「谷村新司 NATURE LIVE〜夢人 ユメジン〜 in東大寺 collaborated with 千住明」を開催。日中の少年少女合唱団と共に「夢人〜ユメジン〜」を初披露。
2007年3月にはカルチャープログラムとして、第一期「ココロの学校〜音で始まり、歌で始まる〜」を東京国際フォーラムにて、ココロの先生として竹中平蔵さん、角田信朗さん、渡辺美里さんをお招きし、3日間にわたり開校。同年4月には5年ぶりとなるフルアルバム「オリオン13」をリリース。同年4月、あいち子ども芸術大学学長に就任。同年5月には国際連合麻薬・犯罪事務局(UNODC)、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」からの依頼で薬物乱用防止キャンペーンソング「ギーター」を制作。同年9月、マキシシングル「夢人〜ユメジン〜」をリリース。自身初のNHK「みんなのうた」をはじめ、「24時間テレビ30」チャリティーソングなどを収録。同年9月、南京芸術学院の名誉教授に就任。日中国交正常化35周年記念、日中文化・スポーツ交流年の認定事業として開催された大型演唱会「日中携手・世紀同行 2007」in上海、南京を成功させる。