HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
谷村教授の上海レポート(第2回)
2008年06月06日
今月のゲスト: 谷村新司さん

「昴」を中国の曲だと思っている中国の人も少なくないとか。80年以上の歴史を持つ上海音楽学院の初の外国人教授に就任した谷村さん。
中国を愛し、中国の人に愛され続けるアーティストが語る、中国、アジア、そして音楽への熱い思いです。
第2回 上海とのかかわり

上海とのかかわりは、国立大学の上海音楽学院より「教授に就任してほしい」という話が来た2003年から始まりました。ちょうど2002年いっぱいかけて、今まで30数年間やってきた生き方のサイクルを全てリセットし、箱を1回空っぽにして、これからの自分たちの役目は何だろう、どうやって生きていこうと考えていた矢先でした。ですから、もし自分たちがそういった状況になければ、当然、もう1年2年とスケジュールが先行し、お受けできなかったでしょう。ちょうど「ああ、このタイミングで来たんだ」と天命のように感じ、上海音楽学院の院長に会いに行きました。
音楽で一番大切なもの

「中国にも優秀な先生がいっぱいいらっしゃるのに、どうして僕なんです?なぜ中国の人にとっては外国人である自分なのでしょうか?」院長であるヤンさんに聞きました。
すると「谷村さんは音楽で一番大切なものは何だと思っていらっしゃいますか?」と逆に聞かれたのです。「理論も技術ももちろん大切ですけれど、それよりも大切なものは音楽の心だと思います。何を伝えるか、どう伝えるか、それをクリエイトしていくことが一番大事なことだと思っています」と答えました。「それをやってもらえるのは、あなたしかいないと思ったので、お願いしました」という院長の言葉に、二つ返事で「やります」とお引き受けしました。期限も決めずに始め、しかも常任の教授だったので、毎月1週間授業をし、気がつけばもう5年目になっています。僕のクラスからも去年は卒業生が出ました。
上海音楽院・人としての音楽

授業では、何人(なにじん)ということではなく、「人として何が一番大切だと思う?」と問いかけています。
例えば生徒たちと先生だけで、文化祭のときにホールを借りてステージをつくりました。日本側からも、僕らの仲間が何人かボランティアで応援に来てくれて、僕もスピーカーを運んだり、セッティングをしたりして、みんなでステージをつくりました。生徒たちがそのステージでパフォーマンスをやり終えたときに、ボランティアで来てくれている日本の裏方みんなを、彼らが胴上げしてくれたのです。その時に「ああ、一番大切なことを彼らは気づいたんだな」と感じました。
そういうことは音楽とは関係ないと思えるかもしれませんが、それが分かっている人がやる音楽でないと、意味がないのです。「単に何枚売れた、お金がどれだけもうかったという音楽は意味がないよ」ということを彼らに伝えたいと思っています。本当は日本でも伝えなければいけないことだけれど、縁があって中国からそういった依頼が来たので、まず中国の若者たちにそれを伝えようと思ったのです。実際、もうだいぶ理解してくれている子が増えてきています。
関連リンク
プロフール
1971年、堀内孝雄とアリスを結成。1972年3月「走っておいで恋人よ」でデビュー。5月に矢沢透が参加。「冬の稲妻」「チャンピオン」など数多くのヒット曲を出し、1981年に活動停止。ソロ活動としては、「いい日旅立ち」「昴」「サライ」など、日本のスタンダード・ナンバーともいえるヒット曲を世に送り出す。1988年からの3年間はロンドン交響楽団、国立パリ・オペラ座交響楽団、ウィーン交響楽団プロジェクト(V.S.O.P)と共演。長年に渡りライフワークとして続けているアジア諸国のアーティストとの交流、そして若手の育成に貢献し、その発表の場作りに尽力している。
2004年3月に上海音楽学院・常任教授に就任。現代音楽の授業を通して中国の若者たちにPOPカルチャーを伝えるための活動を始める。同年11月、1984年から谷村新司、チョー・ヨンピル、アラン・タムによってスタートしたPAX MUSICA (音楽による世界平和)の20周年イベントとして、「PAX MUSICA SUPER 2004」を中国上海大舞台にて開催。
2005年9月には、その想いを次世代に伝えるために”愛・地球博 アジアPOPフェスティバル「PAX MUSICA NEXT 2005」をプロデュースし、アジアの若手アーティスト達と共演。
2006 年9月にはJR西日本DISCOVER WESTキャンペーンのテーマソングとして、マキシシングル「風の暦」をリリース。同年10月、奈良・東大寺大仏殿前にて「谷村新司 NATURE LIVE〜夢人 ユメジン〜 in東大寺 collaborated with 千住明」を開催。日中の少年少女合唱団と共に「夢人〜ユメジン〜」を初披露。
2007年3月にはカルチャープログラムとして、第一期「ココロの学校〜音で始まり、歌で始まる〜」を東京国際フォーラムにて、ココロの先生として竹中平蔵さん、角田信朗さん、渡辺美里さんをお招きし、3日間にわたり開校。同年4月には5年ぶりとなるフルアルバム「オリオン13」をリリース。同年4月、あいち子ども芸術大学学長に就任。同年5月には国際連合麻薬・犯罪事務局(UNODC)、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」からの依頼で薬物乱用防止キャンペーンソング「ギーター」を制作。同年9月、マキシシングル「夢人〜ユメジン〜」をリリース。自身初のNHK「みんなのうた」をはじめ、「24時間テレビ30」チャリティーソングなどを収録。同年9月、南京芸術学院の名誉教授に就任。日中国交正常化35周年記念、日中文化・スポーツ交流年の認定事業として開催された大型演唱会「日中携手・世紀同行 2007」in上海、南京を成功させる。