森ビル株式会社

僕の好きな「ヒルズたち」(第4回)

2008年04月25日

今月のゲスト:編集者 石川次郎さん

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この春5周年を迎える六本木ヒルズ。
東京とその時代の語り部として完成前からこの街を見つめ、街の完成後はフリーペーパー「ヒルズライフ」のプロデューサーとして街と歩んできた石川さんが語る、僕の好きな東京、そして「ヒルズたち」。

第4回 大人っぽさが色濃いアークヒルズ

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大人の雰囲気が漂うアークヒルズ

アークヒルズは、僕が東京で最初に注目した大規模開発です。なかなか面白いものをつくるなと思って、その辺りから森ビルさんの仕事が気になっていました。華々しくアークヒルズがオープンして、ホテルもあるし、レストランもあったし、しばらく話題の場所でした。ただ、やはり話題は六本木ヒルズに移る、それからミッドタウンに移る、それから更に赤坂サカスに移るみたいなことで、アークヒルズがポンと取り残された感じになっているじゃないですか。もちろん、将来的にいろいろ手が加えられるのだと思いますが、僕は今のちょっと静かな感じがすごく好きなんです。何というのかな、別に忘れられたわけではないけれど、人が比較的少なくて、とても落ち着いて大人っぽい感じが色濃くあるんですよね。その雰囲気を生かしながらアークヒルズがうまく改造されると、いい場所になるんではないかと、とても興味を持っているのです。
人がワイワイ来なくても存在意味のある場所、しかも大人が静かに住める、あるいは静かに暮らせる街に、アークヒルズはなるといいのではないかと思います。

ブックアンドカフェのさきがけ『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』

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スターバックスコーヒーと隣接した
TSUTAYA TOKYO ROPPONGI

六本木ヒルズは1日に1回は必ず仕事で行く場所になっています。多いときは行ったり来たり3回ぐらいしますよ。
時間がポンと空いたとき、必ず行くのはブックショップ『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』です。『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』ができた後、ブックアンドカフェのあのスタイルが東京中に流行ってしまって、本屋さんをつくると、必ずその横にカフェができるみたいな、そんな状況が今あるじゃないですか。だから自分がプロデュースしたということもあるのですが『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』というあの店は僕は大好きですね。
この店舗は売り場の改造など、いつも見直しをしています。本の棚も随分変化させたのですが、それをやっているから、お客さんが続いているのではないでしょうか。「この棚はこういう方向のものを売るよ」ということはみんなで決めたのですが、その棚の中身は「編集しなければだめだよ」「どんどん変えていかなければだめだよ」と言っています。例えば旅行の本のコーナーでも、同じ本がいつもあるのではなくて、しょっちゅう本が変わっている、新しい本が必ず入っているという、そういう一種の編集作業が、すべての棚でなされていなければいけない、という話をみんなでしました。それをスタッフが今もきちんとやってくれています。
本のセレクトショップという考えでつくられた本屋さんは、あまりないのです。当然、本というのは売上を考えなければいけないし、本屋さんもベストセラーに頼るという部分もあるし、小説本は必ず置く。でも『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』には小説はあまりないのです。ライフスタイル系の本を、各分野きちんと揃えよう、しかも和書も洋書も、テーマが同じなら同じ棚に並べようというのが、基本的な考えです。それは変えていません。だから、日本中、どこでも成立する本屋ではないですね。自分たちもやっていてびっくりしましたが、一番売上が上がるのが、夜の11時ぐらいです。その辺が一番売上のピークらしいのです。珍しい売れ方ですよね。

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プロフール

1941年東京生まれ。1964年に早稲田大学卒業後、海外旅行専門のトラベル・エージェントに勤務。1967年2月、平凡出版株式会社に入社。「平凡パンチ」誌で 編集者生活のスタートを切る。「Made in USA」、「SKI LIFE」など実験的雑誌づくりを経て、1976年の「POPEYE」創刊に加わる。現マガジンハウス最高顧問の木滑良久氏との共同作業で、引き続き「BRUTUS」、「TARZAN」、「GULLIVER」などを創刊。各誌の編集長を歴任する。
1991年10月よりマガジンハウス広告局長。1993年2月末同社退社。同年4月、企画・編集プロダクションJI inc (株式会社ジェイ・アイ)を設立。メンバーシップ・マガジン「SEVEN SEAS」(アルク刊)、「Travel Style」(世界文化社刊)などの編集長を務め、現在は六本木ヒルズのフリーペーパー「HILLS LIFE」なども手掛ける。また、六本木ヒルズ内にある「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」や川崎の「LA CITTA DELLA」などの商業施設のプロデュースも行う。
1994年4月より2002年3月までテレビ朝日「トゥナイト2」の司会としても活動。現在、企画にも携わっているBS朝日の番組「男たちの食宴」、「亜細亜見聞録」に出演中。