HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
走り続けるパティシエの今(第2回)
2008年03月07日
今月のゲスト:パティシエ 辻口博啓さん

「モンサンクレール」や六本木ヒルズ・けやき坂通りの「ル ショコラ ドゥ アッシュ」など様々なスイーツブランドを次々に立ち上げ、今では日本のスイーツ界をリードする存在となった辻口さんが語る、仕事への愛と情熱、野望。そして故郷への思い。
第2回 和をもって世界を制す

「和をもって世界を制す」が僕の1つのコンセプトです。だからこそ、和を深く突き詰めていく必要があると考えています。もともと農耕民族だった日本人に、徐々に流通革命が起こり、肉を食べるようになってまだ歴史も浅い。狩猟民族型のスタイルになってきていますが、やはり何百年も農耕民族を続けてきた我々の DNAというものがあり、そこに見られる『旨み』の感覚というものをさらに表現していく必要があると思うのです。そういったものを世界に向けて発信していくことは、非常に面白いテーマだと思っています。
今までコンクールも含め世界で戦ってきました。食感、香り、素材の持つ『旨み』というものをどう表現するのか考える中で、食べたときの食感と、口の中で溶け込む旨みが口の皮膜にくっついて、最後は余韻として感じるような、そこまで『旨み』を表現することをコンクールで培ってきました。そういったことを日本の文化に照らし合わせ、開発していくことがとても楽しいです。
お菓子、スイーツは基本的に素材だと思います。素材があれば、管理が必要です。どんなにおいしい素材でも管理が悪ければ腐ってしまいます。ですから管理することというのは、素材に対して一番大事な部分で、管理と素材ということを、いつも念頭においています。
世界平和は食卓から

僕自身、最初のころは1つ1つのことを積み重ねていくことが成功だと考えていました。いずれは成功に向かって歩んでいくのだろうと考え、1つ1つ積み上げてきたわけですが、最近は、だんだん自分の寿命のことも考え、自分の出来る範囲というものをしっかり定めるようになりました。定めないとそこまで到達しないと思ったのです。
僕の目標は、世界征服なんだけれど(笑)、そんなことばかり言っているから寿命が足りなくなってしまう、世界征服というか、世界平和でしょうね、そのぐらい大志を抱きたいじゃないですか。
じゃあ、どういうことで世界征服、世界平和を願うんだというと、「お米」が1つのキーワードなんです。『やさしいお菓子』という本をソニーマガジンから出版したのですが、大変好評でたくさん売れています。そこにはお米でつくるレシピがいっぱい載っていて、それを見てみんながお菓子をつくっています。最近はコンビニエンスストアでもお米でつくったお菓子やパンが溢れています。日本のお米をちゃんと使うことで、和の素材が元気に潤い、農家が本当に自信を持ってお米をつくることができる、減反政策も含めて、社会状況まで波及していくのではないかと思ったのです。
また今、小麦アレルギーの子どもたちや小麦が食べられない人が全世界にいます。そういう人たちのために、本当においしいお菓子を、お米を使って作っていきたい。それを世界に広げることよって、子どもたちの楽しいバースデーや記念日の中で僕のコンセプトが使われていく。そういう地球にしたいなと思うのです。
やっぱり世界平和は食卓からだと思うんです。今、家族のつながりが希薄になり、子どもが1人で御飯を食べたり、冷蔵庫のものをチンして食べるようなことが多くなったと言われます。でも再び、子どもたちとのふれあいを取り戻したほうがいい。やっぱり一番大事なのは食卓だと思うのです。みんなで食卓囲んで御飯を食べる、そこに家族の絆や思いやり、自分が愛されるという自覚が生まれます。そういうものをみんなで取り戻そうじゃないかという動きが出てくれば、いいなと思うのです。
関連リンク
プロフール
1990年「全国洋菓子技術コンクール」で最年少優勝を機に、国際コンクールに出場し、優勝を重ねる。1997年フランス菓子のワールドカップといわれる「クープ・ド・モンド」飴細工部門個人最高得点獲得を含み、国際コンクールに日本代表として出場し3つのタイトルを獲得。1998年自由が丘に「モンサンクレール」をオープン後、コンセプトの異なる10のスイーツブランドを展開。2006年に開館した「辻口博啓美術館」では、6mにも及ぶアメの壁画など、『五感で堪能できるアート空間』を創造し、これまでの「パティシエ」の概念を大きく打ち破る。
現在は各店舗の製造、運営の傍ら、各企業のプロデュースやコラボレーションの他に、著書執筆や講演会、テレビ、ラジオの出演多数。活動は多岐に渡りその活動は、ラジオパーソナリティーをつとめる「アトリエアッシュ」や、自らがナビゲートするライフスタイルマガジン「H・STYLE」発行、公式ブログ『辻口日記』と様々な分野で発信。7月よりスーパーパティシエのお菓子教室「ECOLE-H」により動画によるお菓子教室を配信中。2007年11月には和楽紅屋の3号店目をオープン。辻口の提案する東京土産の「和楽(わらすく)」が大丸 東京店で購入可能になりました。