森ビル株式会社

アートの力を表参道に(第3回)

2008年02月15日

今月のゲスト:アートディレクター 藤本やすしさん

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「BRUTUS」「VOGUE NIPPON」など100誌以上にも及ぶ雑誌に関わってきた藤本さん。旧同潤会青山アパートにあったギャラリーのオーナーとして、表参道ヒルズとのゆかりも深い人です。そんな藤本さんが語る表参道。そして東京。

第3回 新しいギャラリーROCKET

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2007年11月南青山に移転リオープンしたROCKET

先程話した同潤会青山アパートでギャラリーROCKETを始めて10年以上経ちますが、途中いろいろと場所と形式を変えてやってきました。もちろんギャラリーですから作品を見ていただくのが基本ですが、併設して作品を気軽に買えるショップを作ったりもして。
2年前にギャラリーとしての活動を一旦休止しましたが、2007年11月、南青山へCapのオフィスが移った時に、その地下にギャラリーを再オープン。新しいギャラリーは、アートを“感じて”いただく場所にしたいと考えています。
今、青山周辺にはギャラリーが増えているので、それらと何か差別化をしたいと考え、ただ作品を見せるだけでなくスペースを活かしたインスタレーションでの作品発表に注力しています。再オープン企画は、フラワーアーティスト青木むすびさんによる「夜の植物園」を実施しました。地下にある空間で、夜、植物を観賞する…。不思議なムードを醸し出していて評判がよかったですよ。
青山、原宿、表参道エリアを90年代からずっと見ていて大きく変わったことは、新しい建物がどんどん増えたということですね。空スペースができると、必ずそこにはヘアサロンやファションショップができる。しかし、なんであんなに女の人はヘアサロンへ行くんでしょう。多いですよね。このエリアに300軒以上もあるらしいですよ。表参道の街をおしゃれにしているのは、そのヘアサロンに来る人もですが、そこで働く人たちもですよね。それが、表参道を活性化しているような気もします。それから、海外ブランドがこの街に進出して、新しい建築家による興味深いモニュメントが増えたということも特筆していいことだと思います。

私が今いちばん注目する「東京」

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フラワーアーティスト青木むすびさんによる
「夜の植物園」

今、東京で一番注目している、面白いなと思っていることは、六本木に新しい美術館がいくつかできたことです。六本木ヒルズの「森美術館」、ミッドタウン内の「21_21 DESIGN SIGHT」と「サントリー美術館」、「国立新美術館」のトライアングルに、何とか「表参道ヒルズミュージアム」とくっつけてスクエアにして、4カ所を回ってほしいなというふうにも考えています。
表参道は、ギャラリーはあっても新しい感覚の美術館がないんです。最近、ギャラリーはものすごく増えていますけどね。ちょっと前に思ったんですけれど、ファッションのショップが増えてくると、その差別化が難しくなる。でも何かで差別化しなければ…ということで、ファッション界でアートが注目されてきたのではないでしょうか。アーティストがつくる物って特徴的でしょ?そういう特徴あるイメージを借りて、ショップの差別化を図る。ファッションとアートの結びつきって、差別化ということから始まった現象のように思います。
そしてその差別化を目的にファッションショップがギャラリーを作ることで、エキシビションスペースは増えてます。だけどコンテンツはどうか?ついて行けているか?というとこれは難しいですね。まあ、アートといってもいろいろあって選択の幅は広いから、探せばコンテンツはたくさんあると思いますけどね。

関連リンク

プロフール

1983年にデザインオフィス「Cap」設立。アートディレクターとして過去に『マリークレール』『流行通信』『olive』『STUDIO VOICE』『Tokion』など、現在では『VOGUE NIPPON』『GQ JAPAN』『GINZA』『BRUTUS』『CASA BRUTUS』「BRUTUS TRIP』を手掛ける。デザイナーとして関わった雑誌は約100誌にのぼる。また、ルイ・ヴィトン、表参道ヒルズの広告印刷物や、アパレルのシーズンカタログなどのアートディレクターも務める。
1996年gallery ROCKETを原宿にオープン。2度の移転を経て2007年11月南青山にリオープン。また1999年には編集および広告制作を手掛ける RCKT/Rocket Companyを設立。ギンザグラフィックギャラリーにて2004年3月「雑誌をデザインする集団CAP展」、2007年11月「WELCOME TO MAGAZINE POOL展」を開催。著書として、2004年『雑誌をデザインする集団キャップ』、2006年『雑誌をデザインする人と現場とセンスの秘密』、2007年『雑誌デザインの潮流を変えた10人』をピエブックスより発行。