森ビル株式会社

アートの力を表参道に(第2回)

2008年02月08日

今月のゲスト:アートディレクター 藤本やすしさん

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「BRUTUS」「VOGUE NIPPON」など100誌以上にも及ぶ雑誌に関わってきた藤本さん。旧同潤会青山アパートにあったギャラリーのオーナーとして、表参道ヒルズとのゆかりも深い人です。そんな藤本さんが語る表参道。そして東京。

第2回 表参道ヒルズの2周年企画「表参道ヒルズミュージアム」

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2周年記念イベント「MOOH」のロゴとパターン

表参道ヒルズは、今年2月で2周年を迎えます。今までは安藤忠雄さんの建築物ということでランドマーク的に、そしてもの珍しさから来館した方々もたくさんいたと思いますが、今回2周年ということで、表参道ヒルズから何かメッセージを発信できないかと企画したのが、この「表参道ヒルズミュージアム」です。
昨年パリコレを見た時、マーク・ジェイコブスなど多くのファッションデザイナーが、現代美術からストリートアートまでアートをファッションに取り入れた作品を発表していて、これはちょっと面白い傾向だなと思いました。そして表参道ヒルズにもファッションのショップが全体の70%くらいあって、それぞれのデザイナーが作品としてこだわりのあるアイテムを作って商品として提供しているわけだから、そのアイテムをアート作品ととらえたらどうかな、というのが発想の起点です。
表参道ヒルズ全体を「表参道ヒルズミュージアム」と言い切り、アイテムはすべてアート作品である、というテーマ。編集的視点として何かサプライズが欲しかったということです。

ジャン=フィリップ・デロームの魅力

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ジャン・フィリップ・デロームが
表参道ヒルズ2周年のために描き下ろした作品

今回、「表参道ヒルズミュージアム」のメインビジュアルを、世界的に有名なイラストレーターのジャン=フィリップ・デロームにお願いしました。僕は『Casa BRUTUS』や『VOGUE NIPPON』という雑誌のアートディレクターをやっていて、おしゃれなイラストが欲しい時には、すぐデロームの顔が浮かぶんです。今回もファッション感やおしゃれ感のあるものを描いてもらいたかったので、すぐ彼に連絡しました。
デロームは、昨年フランスで開催されたコルビュジエ関連の展覧会にかかわっていて、森ビルの社長も、昨年、森美術館でコルビュジエ展を開催するなど、コルビュジエの大ファンであるということを知っていたので、「面白い組み合わせになるな」とも思って。デロームはもちろん快諾してくれました。
先日、初めて表参道ヒルズに来館した彼は、もともと建築好きで安藤忠雄さんのこともよく知っていて、勉強もしているので、実物を見て少し興奮していましたね。とても面白い建物だ、まず回廊が面白いと。グルグル回って上に登りながら、「これはニューヨークのグッゲンハイムのようだね」なんて言っていましたよ。
そもそもデロームとのつき合いは古く、7〜8年前から『Casa BRUTUS』の表紙や、『VOGUE NIPPON』のイラストを描いてもらっていて、昨年7月パリへ行ったときには、彼のアトリエで昔から順を追って彼の仕事を見せてもらったりもしました。

デロームと表参道ヒルズのマッチングは、思った通りのおしゃれ感を生み出すことになるはずです。それも普通程度のおしゃれ感ではなく、ラグジュアリーな感度を持った人のためのおしゃれ感を。
デロームに描きおろしてもらうビジュアル展開の他に、「ファッション×アート」というテーマのもと、表参道ヒルズ内の各ショップとのアートコラボレーションもあります。かのマルセル・デュシャンは「作品の半分は鑑賞者がつくる」というようなことを言っています。そこで、各ショップのアート作品を、オリジナルフレームの前に置いて展示することにしました。商品が作品ということになるのですが、その作品の価値は、鑑賞する人=消費者が半分つくるという形になります。

関連リンク

プロフール

1983年にデザインオフィス「Cap」設立。アートディレクターとして過去に『マリークレール』『流行通信』『olive』『STUDIO VOICE』『Tokion』など、現在では『VOGUE NIPPON』『GQ JAPAN』『GINZA』『BRUTUS』『CASA BRUTUS』「BRUTUS TRIP』を手掛ける。デザイナーとして関わった雑誌は約100誌にのぼる。また、ルイ・ヴィトン、表参道ヒルズの広告印刷物や、アパレルのシーズンカタログなどのアートディレクターも務める。
1996年gallery ROCKETを原宿にオープン。2度の移転を経て2007年11月南青山にリオープン。また1999年には編集および広告制作を手掛ける RCKT/Rocket Companyを設立。ギンザグラフィックギャラリーにて2004年3月「雑誌をデザインする集団CAP展」、2007年11月「WELCOME TO MAGAZINE POOL展」を開催。著書として、2004年『雑誌をデザインする集団キャップ』、2006年『雑誌をデザインする人と現場とセンスの秘密』、2007年『雑誌デザインの潮流を変えた10人』をピエブックスより発行。