HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
魂が乗り移った顔たち(第3回)
2008年01月18日
今月のゲスト: 石井竜也さん

映画監督。プロデューサー。インダストリアルデザイナー。そしてもちろんミュージシャン。様々な顔を持つ石井さんが黙々と作り続けている「顔たち」。作家の無意識と衝動が作り上げてきた、独特かつ衝撃的な世界が六本木ヒルズに登場です。
第3回 「カールスモーキー石井」と「石井竜也」

「石井竜也のからくり」みたいなものを話せと言われると、何とも複雑怪奇でなかなか一言では話せないのですが、まず「米米CLUBのカールスモーキー石井」というキャラクターを米米CLUBが始まったころにつくり上げて、それをずっと演じているような感じです。こと、あのキャラクターに関しては、何となく自分の体の周りに鎧をつけるようなつもりでやっていたような節がありますね。
石井竜也という名前でソロになってからは、丸裸にならなければいけないというか、自分の感覚すべてを使って自分の表現をみんなにわかってもらおう、見てもらおうという意識が出てきました。やっぱりバンドというのは1人でやっているものではなくチームプレーなので、どこかで妥協しなければいけないんですよね。自分はその歯車の1個というふうに、いくらフロントマンで『君がいるだけで』を歌っていたとしてもバンドの一員という頭はずっとあるんです。だから2007年12月に、僕がつくった2本の映画『河童』と『ACRI』がDVD化されたのですが、それで自分が1つになったように思いました。映画をつくっている自分と、いろいろな作品をつくっている自分、そしてソロの自分というのが、やっとこう1つの世界になったかなと思いました。
ソロ活動を始めてから10年という年月は、ものすごく深く自分のことを見つけられた10年だったような気がします。ソロの活動はとても深いところまでいろいろなことにかかわらせていただいて、どちらかというとアーティストの顔の方が強い活動をしていたような気がします。
そして一昨年、米米CLUBを再結成して、またみんなを楽しませているのですけれど、そうしてみると何ともそこに、はまりにくい自分がいるんですよね(笑)。「ここでこれをやるか?これやっちゃうんだな」みたいに感じる自分もいたりして、ちょっと複雑な感じで最初は始まったのですが、それでワーッと楽しんでくれる人たちがいっぱいいるということは、すばらしいことだと。ステージに立っている人間としては、ああいう満面の笑顔で見ているお客さんを見てしまうと「ああ、これ、あってもいいのかもしれないな」とも思いました。
六本木ヒルズ・アリーナで再認識した「米米」の楽しさ

米米の2年目の活動で、大きなツアーが2年続けてありましたので、そのツアーの前祝みたいな感じで「六本木ヒルズアリーナ」をお借りしてイベントを行いました。大盛り上がりで、『SHAKE HIP!』をつくっていた自分たちが面食らってしまうぐらいすごい勢いで、ファンの皆さんは喜んで踊ってくれました。
そして無事に終わったあと、何か「やっぱり米米って楽しいな」って、通りすがりの全然僕らのファンでもない人たちがそういうふうに言ってくれる声を聞いたときに、「ああ、なんか、米米ってやっぱり楽しいバンドなんだな」と、改めて感じました。
こういう街の中に「六本木ヒルズアリーナ」みたいに、表現できる広場があるというのはすばらしいことだと思います。日本の街づくりを見ていると広場をつくるのが下手くそなような気がするんですよね。どの街にいっても、広場に人がたくさん集まれないように作られている気がするんですよね。イタリアやフランスなどに行くと、広場に人が集まるように街ができているのですね。そういう街づくりを、これから東京もどんどんやっていったらいいんじゃないかな。みんなが集まる場所というのは大切な気がしますね。六本木ヒルズのあの空間をいつも歩くのですが、みんなのんきに歩いている姿が、僕はとってもいいなと思うのです。こういう広場がもっといっぱいできればいいのになと思います。
たまに、そののんきな場所に米米がやってくると嵐を呼ぶ、みたいな(笑)。そしてのんきな広場の上のギャラリーに「顔魂」が鎮座するという、とてつもない世界をつくっているな、石井竜也は、というふうに思いますね。
関連リンク
プロフール
1959年生まれ。'97年ソロ活動始動。毎回、テーマ性のある趣向を凝らした全国ツアーやアートパフォーマンス、オーケストラライブなどを展開。音楽活動に加えて「大阪HEP FIVE」の空間プロデュースや「鈴鹿8時間耐久レース」の総合プロデュース、'05年には愛知万博「愛・地球博」レギュラープログラムの総合プロデューサーを務める。さらに'02年から音と光のインスタレーション「GROUND ANGEL」を横浜赤レンガ倉庫にて開催。'05〜'06年には広島市の全面協力のもと広島平和記念公園にて「GROUND ANGEL IN HIROSHIMA」を開催する。作品制作にも積極的に取り組み、'97年「空想美術館」'99年「昇展」'02年「NUDE」'06年「VENUSWHITE」といった展覧会を開催。またインダストリアル・デザイナーとしても多くのデザインを手がける。今冬には、映画監督を務めた'94 年公開『河童』と'96年公開『ACRI』が待望のDVDとなった。