森ビル株式会社

東京をかきまぜよう(第3回)

2007年11月22日

今月のゲスト:アートディレクター 佐藤直樹さん

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森美術館「六本木クロッシング2007:未来への躍動」展、キュレーターの一人。時やジャンルを超えて交じりあう表現。そこから生まれるエネルギーや力。佐藤さん自身も、東京に対する既成概念を壊す動きに取り組み始めているそうです。

第3回 街を見直すもうひとつの視点『セントラル・イースト・東京』

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展示風景:
「六本木クロッシング2007:未来への脈動」
榎 忠《RPM−1200》 2005年

『セントラル・イースト・東京』というイベント、もともとは2003年がスタートです。そのときに、「東京デザイナーズブロック」というデザインイベントが渋谷、六本木、青山、表参道、代官山、まあ要するに東京の西側で若い人たちがすごく集まっている場所で行われていました。それは継続されていて、今の『デザインタイド』というイベントがそれを引き継いでいます。同時期に『デザインウィーク』もあって、今デザイン業界全体を盛りたてている核になっているものだと思いますけれど、その前身だった『東京デザイナーズブロック』というのが西側を中心にすごく盛り上がっていた。
そこからちょっと派生する形でデザイナー、キューレーター、建築家の人たちが集まって、「R[アール]」というテーマでいろいろ話し合いをしていたのです。

「R [アール]」というのは、新しい物をどんどんつくって消費してということだけではなくて、もちろんデザインというのは一番そういう矢面に立たされるジャンルではあるのですが、だからこそ、もう少し古い物の価値とか、もう1回使い直してみることなどを考えていました。それがちょうど東側が周辺がどんどん開発される最中で取り残されてしまったような場所があって、そこの人たちと交流する中で、じゃあ、『デザイナーズブロック』みたいなお祭りが東側でもできないかと、そんな話がひょんなことで持ち上がったのです。
行ってみたら、本当に空きビルがたくさんあったり、廃墟化している場所があったので、そこで自分たちの作品を発表してみたり改装してみたり、街自体をギャラリー化して楽しんで活性化していくという流れができて、それが今に至っています。
ギャラリーや、アーティストのアトリエ、面白いカフェができたり、かなり変わってきています。谷中とか浅草とかの下町の方は、それなりに情緒深く続いていると思うのですが、馬喰町のある周辺は問屋街で、いわゆるみんなが遊びに行って楽しんでという部分はなくなってしまっているのです。だからこそ逆に見方を変えたらすごく魅力的に見える、そういう見立てができる部分がすごくあると感じます。馬喰町、東日本橋、小伝馬町のあたりは、例えば古いビルを自分で改装し直して住み直すといったユニークな動きが特徴的かなという感じはします。

そこでいままた何か新しいムーブメントをやりたいなと思っているところです。2003年以来、毎年イベントはやってきたのですが、ものすごくとんがった部分と、すごく安心できる部分を同時にやったらどうなっちゃうんだろうということを、いきなり街で道路を封鎖して実験してみるとか。街が疲弊してしまっているのがすごく残念なことなので、そこを盛りたてていきたいという気持ちもあって、ネットワークはつくろうと思っています。どんなイベントをやっていくか、どんなネットワークを組んでいくかということもこれから活発化していこうと思っています。

プロフール

1961年生まれ。北海道教育大学卒業後、信州大学で教育社会学を学ぶ。肉体労働から編集までの様々な職業を経た後、1994年『ワイアード』日本版創刊にあたり米国ワイアード・ベンチャー社へデザイン・プレゼンテーションを行い、アートディレクターに就任。同誌のクリエイティブディレクターを経て独立。 1996年に株式会社ソイグラフィカを設立し、1998年に株式会社アジール・デザインへと移行。エディトリアルの枠を超え、音楽・映画・ファッション等々へとフィールドを広げつつ、グラフィックから映像やウエブに至るメディアの横断的ディレクションを行ってきた。2004年には新ジャンルの開拓をさらに強化すべく株式会社アジール・クラック設立。現在は、株式会社アジール(ASYL)として統合し、多種多様なメディアに対応している。