HILLS CAST
“東京をおもしろくするアイデア”を持ったゲストをお迎えしてお届けする「HILLS CAST」は、J-WAVEのラジオ番組「森ビル presents 東京コンシェルジュ」内で放送していた森ビルのラジオCMです。
※掲載内容は、取材・放送時点のものです。
東京をかきまぜよう(第2回)
2007年11月16日
今月のゲスト:アートディレクター 佐藤直樹さん

森美術館「六本木クロッシング2007:未来への躍動」展、キュレーターの一人。時やジャンルを超えて交じりあう表現。そこから生まれるエネルギーや力。佐藤さん自身も、東京に対する既成概念を壊す動きに取り組み始めているそうです。
第2回 『六本木クロッシング2007』を楽しむポイント

「六本木クロッシング2007:未来への脈動」
佐藤雅彦+桐山孝司《計算の庭》 2007年
『六本木クロッシング』という展覧会は今回2回目で、前回のとき、まさか自分がキューレーターやるとは思っていなかったので気楽に観客として見に行ったのですが、そのときは出展人数が多く、1人ひとりのスペースがかなり限られていた印象がありました。それはそれでたくさんの人を紹介するという利点もあっのですが、今回は1人ひとりに十分な表現をしてもらうために、頑張って参加アーティストの数を絞ってみました。本当は「クロッシング」というテーマで、いわゆる美術というジャンルに狭く限定しないで、写真、デザイン、映像、マンガ、ゲーム、インターネット、メディアアートなどどんどん広げていくと、こんな人数で収まるわけがないのです。けれど、キュレーターで何度か論議をして、1人ひとりが自分のジャンルにこもらず、ほかのジャンルにも影響を与える、与えられているという、その人その人の中でも交差が起こっているという人に注目し選んでいるという視点が今回の特徴です。
建築家からすごい人を呼んできた、ファッションデザイナーからすごい人を呼んできたというふうに勝手にこっちで領域をまたいでたくさんの人を集めるのではなくて、それぞれの表現自体にクロスジャンル的な要素を持っているということが、今回のキーかなと思っています。
今回のもうひとつの特徴は、まず世代をあまり限定していないこと。若手という形で集めているわけではなくて、1960-70年代から結構いろいろな意味で影響力を持って来た人たちで現在性を十分持っているという方にも声をかけています。
例えば、立石大河亞さんは、そもそもマンガをやったり、タブロー的な大きな作品を描いたりとか、横断的な活動をずっとしている方で、いわゆる美術家でも影響を受けている人がいますし、サブカルチャー的なジャンルで活動している人たちでも影響を受けている人がいます。それから若手では辻川幸一郎君。プロモーションビデオやコマーシャルの世界では結構知られた存在ではないかと思いますけれど、普通美術家として扱うことは多分ないと思います。
佐藤雅彦さんはもともと広告をつくっていた方ですけれども、表現が広告とかエンターテイメントというところに収まらない部分があって、非常に面白いです。
エンライトメントも若い人たちにはもう十分名前を知られているとは思うのですが、いわゆる美術展の中でという注目のされ方は、今まであまりしてこなかったかもしれないです。宇川直宏さんは、VJとしては人気が高く、デザイナーとしても数多く仕事をされている人ですが、今回はアーティストとして参加をお願いしました。やはりアーティストとして作品を出す場合というのは、単に格好いいとかいうレベルではなくて、ほかのジャンルでは絶対できないことを、ぜひここでやってもらおうと。今回はほとんどの人にできるだけ新作をとお願いしています。
『六本木クロッシング』はある意味、森美術館らしいエキシビションといえると思います。世代的にも、ものすごくキャリアを積んできている人もいるし、今ちょうど脂が乗りつつあって、若い層の支持を得てという人もたくさんいますし、それから映像的な表現だったり、彫刻とか絵画とか、いわゆる美術の王道から突き詰めてきている人たちもいるので、例えば現代美術に興味があるということでないと見ることができないというものでは全くないのです。今一番先端でものをつくっている人というのは、どんなことを考えて、どんなことにチャレンジしているんだろうというぐらいの関心があれば、入り口はすごくたくさんあると思うので、表現上はすごくバラエティに富んでいると思います。年齢的にも多分そんなに敷居がないと思いますし、そんなに難しいものでもないと思います。すごく楽しめると思います。
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プロフール
1961年生まれ。北海道教育大学卒業後、信州大学で教育社会学を学ぶ。肉体労働から編集までの様々な職業を経た後、1994年『ワイアード』日本版創刊にあたり米国ワイアード・ベンチャー社へデザイン・プレゼンテーションを行い、アートディレクターに就任。同誌のクリエイティブディレクターを経て独立。 1996年に株式会社ソイグラフィカを設立し、1998年に株式会社アジール・デザインへと移行。エディトリアルの枠を超え、音楽・映画・ファッション等々へとフィールドを広げつつ、グラフィックから映像やウエブに至るメディアの横断的ディレクションを行ってきた。2004年には新ジャンルの開拓をさらに強化すべく株式会社アジール・クラック設立。現在は、株式会社アジール(ASYL)として統合し、多種多様なメディアに対応している。