【森美術館】「森万里子:燦燦」開催
アート、テクノロジー、そして超越的な体験 30年にわたるイノベーションの軌跡
森美術館ではニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム財団の協力のもと「森万里子:燦燦」を開催します。本展は、日本では東京都現代美術館での「森万里子 ピュアランド」(2002年)以来24年ぶりの大規模個展となり、30年以上にわたる活動のなかから約40点の作品を紹介するものです。パフォーマンス、CG技術を駆使した写真や映像、ドローイング、立体作品、そして大規模なインタラクティブ・インスタレーションなど、森の代名詞とも言える多様なメディアを通して、コンセプチュアルで芸術性の高い実践の数々を総覧しつつ、その革新的な創作活動を、大衆文化、テクノロジーの未来主義、意識をめぐる哲学といった新たな枠組みに位置づけ、改めて包括的に評価します。
今日、世界の現代アート界で多様な文化や文明への関心が高まるなか、先住民族や非西洋における儀礼的・伝統的な営みと不可分な創作活動が再び注目を集め、一方ではテクノロジーの加速度的な進化によって創造行為そのものの意味が問い直されています。また各地で戦争や紛争が起こり、グローバル経済が政治化するなかで、ヒューマニティーとしての普遍性が切実に求められています。こうした時代に森万里子の実践を総覧することは、深い必然性があると考えます。
森万里子は1990年代半ば、自身のパフォーマンスに基づいた写真や映像作品である「サイボーグ」シリーズを発表し、コンピューター・グラフィックスを先駆的に使ったSF的なイメージで時代の寵児として注目を浴びました。彼女の関心はその後、日本のアニメ文化やジェンダー、ポストヒューマンといった現代社会への批評的な視点から、仏教の死生観や宇宙観に深く影響された、より壮大な哲学的関心へと拡がり、涅槃や浄土など仏教的世界を連想させるインタラクティブな大規模インスタレーションへ発展します。21世紀に入り、世界各地で分断が広がるなか、太古の時間から無限の宇宙まで、時空を超越したあらゆる生命の繋がりを提唱する概念「ワンネス(Oneness)」が彼女の実践における中核的な価値観となっていきます。そこでは世界中の学者や科学者との研究・協力に基づき、アニミズム、縄文やケルトなどの古代文化、仏教の唯識論から、素粒子論、宇宙物理学まで、広範な主題の探究がなされ、《Wave UFO》(1999-2002年)に代表される、最新テクノロジーを駆使した作品として具現化、体験化されてきました。2010年には自然界と人間の繋がりを再認識する作品の恒久設置を目指してFaou(ファウ)公益財団を設立し、宮古島、リオデジャネイロなどでそのミッションが既に実現しています。

森 万里子《巫女の祈り》1996年 ビデオ 4分42秒

森 万里子《Wave UFO》1999-2002年
脳波インターフェース、ビジョンドーム、プロジェクター、コンピュータシステム、グラスファイバー、テクノジェル、アクリル、カーボンファイバー、アルミニウム、マグネシウム
528×1134×493 cm
展示風景:「森万里子:Wave UFO」ブレゲンツ美術館(オーストリア)2003年
撮影:リチャード・リーロイド
展覧会タイトルの「燦燦(さんさん)」は、森万里子の実践の中心にある「光」を象徴しています。光は、仏教では慈悲や智慧を示す光明、それを可視化した光背、神道では太陽神に代表される神々であり、森の具体的な作品のなかでは、超新星爆発によって生成されるニュートリノを可視的な光に転換した《トムナフーリ》(2006年)、冬至の太陽を捉える《プライマル・リズム:サンピラー》(2011年)、《リング:自然とひとつに》(2016年)などに通底しています。光、知覚、意識を通る没入的な体験として構成された「森万里子:燦燦」は、テクノロジーの加速と惑星規模の不安定さに象徴される現代において、自身を見つめなおす場となるでしょう。
本展は、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館・財団シニア・キュレーター・アット・ラージ(グローバル・アーツ部門)のアレクサンドラ・モンローと、森美術館館長の片岡真実による共同キュレーションです。


