六本木ヒルズ
Roppongi Hills

コンセプトconcept
六本木ヒルズのコンセプトは「文化都心」です。「経済だけで文化がない都市では、世界の人々を引きつけることはできない」との強い考えから、文化がもたらす豊かな都市生活と経済の両立・融合を目指し、職・住・商・憩・遊・学といった多様な都市機能を高度に複合させた「コンパクトシティ(都市の中の都市)」を誕生させました。
森ビルが創造する「文化都心」とは、暮らしや仕事、買い物の合間に気軽に世界のアートに触れ、一流の人々から学び、旬な人々と交流できる場、機会、時間がある街。六本木ヒルズではその象徴として、街の中心に位置する森タワーの最上層に美術館やギャラリー、会員制クラブなどを集積した文化拠点を設けました。また、映画館や放送センターなど多様な文化施設に加え、街中に点在するパブリックアートとストリートファニチャーが彩りを添えています。一年を通じて数多くの文化イベントも開催され、常に新しい何かが起きている場所、常に新しい知や創造や可能性が生まれている場所、情報の発信基地として時代を牽引し、成長を続けています。
開発経緯History
当地区の再開発区域は約11ha(六本木ヒルズゲートタワーを除く)。立地としては北側に六本木通り、地区の北側から東側にかけて環状3号線、西側にはテレビ朝日通りと呼ばれる補助10号線、という幹線道路に挟まれた位置にあります。地区の中央には昭和33年(1958)に日本教育テレビとして放送を開始したテレビ朝日の敷地が約3ha広がっていました。地区西側のテレビ朝日通りや北側の六本木通り沿いには7階から9階建ての、昭和40年代に建てられた中小のビルが立ち並んでいました。
テレビ朝日の南側の住宅地は、昭和33年に日本住宅公団によって分譲された5棟、116戸の公団日ヶ窪住宅と木造を中心とした低層住宅地で構成されていました。この住宅地はテレビ朝日の地盤面が海抜31mなのに対して最大15mほど落ち込んだ窪地のような地形でした。住宅地内の道路は西から東への一方通行路となっており、テレビ朝日通りの1ヵ所の入口から入り、住宅地の中で細街路が広がり、出口は環状3号線に向かってまた1ヵ所で出て行きます。幅員3m前後の狭い道路で、消防車は入れず、救急車もやっと通り抜ける防災上の課題を抱えた地域でした。
開発経緯年表
計画概要Project Overview
開発前の状況
六本木ヒルズは六本木通りと環状3号線の結節点である六本木六丁目交差点の南側に位置し、計画地は六本木通りと環状3号線、テレビ朝日通りに囲まれた約11ha(六本木ヒルズゲートタワーを除く)の区域となっています。計画地の中央にはテレビ朝日の敷地が広がっており、南側の木造を中心とした低層住宅が密集して立ち並ぶ住宅地とは15m以上の高低差がありました。住宅地の中は車と人がやっとすれ違える程度の狭い一方通行の道路で、消防車が入れず防災上の課題を抱えた地域でした。
また六本木六丁目交差点は広域幹線道路の結節点でありながら、南側がトンネルのみの整備にとどまっており、平面接続されていませんでした。
開発前写真
開発後写真
六本木ヒルズの基盤整備
当再開発事業では、これまで実現されていなかった環状3号線(麻布十番側)と六本木通りを平面接続する連結側道を整備し広域交通網の向上を図りました。また、連結側道の上部に広場状の歩行者デッキ(66プラザ)を設け、既存の地下横断歩道の改築整備を行い、現在の交差点を整備しました。66プラザは隣接するメトロハットにおいて日比谷線六本木駅連絡通路と直通エスカレータで結ばれ駅利用者の利便性を向上させるとともに、六本木六丁目交差点での歩車分離を実現し、六本木から西麻布へ続く街並みの連続性を確保しています。
この66プラザは下のレベルが連結側道と敷地内車路の出入口、さらにその下に麻布トンネルがある三層構造になっています。道路工事と両側の建築工事を一体的に計画し同時に施工したことにより初めて実現出来たと言える、都市再開発事業ならではの手法です。
地区のメインストリートである「けやき坂通り」は、地区の東西を横断しテレビ朝日通りと環状3号線を接続しています。沿道にケヤキ並木を配し、両側敷地の壁面後退部分を含め実質幅員24mの街路空間として整備しました。道路整備と沿道建築物の整備を一体的に行うことによって、街路景観的にデザインされたゆとりある歩行者空間を実現しました。また敷地内に自動車専用動線を整備し(森タワー1階/センターループ)、自動車専用動線に駐車場出入口や車寄せ、タクシーベイ、路線バスの停留所などを設け周辺道路への影響を減らしていると同時に歩車分離による安全確保を図りました。
ループ車路
環状3号線・六本木六丁目交差点
環状3号線・毛利庭園側
施設概要Facility Overview
六本木ヒルズは“文化都心”をコンセプトとして、オフィス・住宅・商業施設・文化施設・ホテル・シネマコンプレックス・放送センターなど「住む、働く、遊ぶ、憩う、学ぶ、創る」といった多様な機能が複合した街です。
オフィス
六本木ヒルズ森タワー
地上54階、高さ238mの六本木ヒルズのメインタワーであり東京のランドマークとして定着。8階から48階までに位置するオフィスは、超高層ビルの1フロア貸室面積として国内最大級の約1,360坪(約4,500m²)を誇ります。超高速のネットワーク、卓越した耐震性能と徹底したセキュリティなどを備えた最新鋭のオフィスビルです。
最上層部には、森美術館、東京シティビュー(展望台)、六本木ヒルズクラブなど文化・教育施設を配し、「文化都心」のシンボルとなっています。六本木ヒルズ クロスポイント
地上10階建、延床面積約7,578m²の事務所、店舗、住宅他からなる複合施設で、隣接する六本木ヒルズの機能を最大限享受するとともに、相互の価値を高めながら六本木ヒルズの更なる発展を促進する施設です。基準階貸室は、階高を最大限に活かすため、天井を仕上げないスケルトンでの利用も可能となり、内装の自由度を向上させます。
六本木ヒルズゲートタワー
新時代の文化を担う六本木ヒルズの玄関口。2階までが店舗、3~9階が事務所、10~15階が住宅。それぞれが階層ごとのデザインによって重なり合っています。
六本木ヒルズノースタワー
日比谷線六本木駅に直結したオフィスビル。地下1階から2階は店舗で構成されています。
けやき坂テラス
けやき坂の入口。1、2階を店舗、3~6階をオフィスで構成されています。
レジデンス
六本木ヒルズレジデンス
街のシンボルとなる「森アーツセンター」を始め、都心初のシネマコンプレックス、高級ブランドショップから気軽なカフェまでが揃う店舗ゾーン、テレビ局、ホテルなどを身近に感じる「文化都心」の中心に位置します。街の中で暮らすということをテーマに、住む人の快適性を最優先に空間をデザインし、ゆとりと暖かさに満ちた新しい「暮らし」のスタンダードを、日々の中に感じていただけます。
六本木ヒルズゲートタワーレジデンス
文化都心「六本木ヒルズ」の中にあって、閑静な佇まいを保つ元麻布や、懐かしさを残す麻布十番商店街にも隣接する立地は、利便性と良好な住環境を兼ね備えています。
商業施設
コンセプトの異なる4つのエリアに200を超える“only one”のショップやレストランからなる商業施設。各建物の低層部や路面に店舗が連続し、緑溢れる開放的な空間の中で、街全体を回遊しながらショッピングや飲食が楽しめる構成となっています。
また、複合施設であることから生まれる多目的な過ごし方ができるのも、この商業施設の魅力です。六本木ヒルズという街のコンセプトに対する共感で結ばれた店舗とは、ここにしかないオリジナリティやクオリティを追求してきました。
芸術・文化施設
森美術館
世界中で最も空に近い美術館。国際的に著名な美術館との提携・ネットワークにより、世界の現代美術を堪能できる空間を創ります。展覧会期間中は無休、10時〜22時まで開館しており、仕事帰りやディナーの後でも展覧会をお楽しみいただけます。
東京シティビュー
森タワー52階に位置する、11mを超える吹き抜けと、1周約300m、4,735m²の国内最大級の面積を誇る展望施設&ギャラリー。
森アーツセンターギャラリー
展望台と同じフロアにある約1000m²のギャラリー。森アーツセンターギャラリーは、ファッションやシネマなど身近なテーマから歴史的な名画など、幅広いジャンルの展覧会を開催するアートギャラリーです。
六本木ヒルズクラブ
森タワー51階にあるメンバーシップクラブで、昼夜問わず、世界各国の幅広い分野で活躍する人々が集い、交流を深めています。東京シティビュー、森美術館など様々な街のコンテンツとの連携も生み出しています。
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
国内最高峰のシネマコンプレックス。様々なタイムの映画が楽しめる9つのスクリーンと、これまでの映画館にはないサービスと設備を持つ、六本木の新しい文化の発信地です。
イベントスペース・会議室
六本木ヒルズアリーナ
六本木ヒルズの中央に位置する、巨大な開閉式屋根をもつマルチエンターテイメントスペース。ライブイベントやレッドカーペットイベント、広場全体を使ったパフォーマンスまで、オープンエアだからこそ実現できる多彩なイベント展開が可能です。
ホテル・リゾート・ウェルネス
グランド ハイアット 東京
個性あふれる10のレストラン・バー、究極のくつろぎを目指す387の客室、16の宴会場施設などダイナミックで都会的な空間と、ホテル内ならびに六本木ヒルズの多岐にわたる施設によって豊かな時間の創出を提供します。また、都内でも有数の施設を誇るスパは、肌と心に真のうるおいをお届けします。
六本木ヒルズスパ
六本木ヒルズの一角に位置する総面積1800m²の大型スパ、六本木ヒルズスパ。フィットネスジムでは、筋力トレーニング、水泳など多種多彩なメニューをご用意しています。経験豊かなトレーナーが、個別のオリジナルメニューで、楽しく、効果的なフィットネスのお手伝いをいたします。また、ユニセックスメニューが充実したエステティック&マッサージでは“Top to Toe”の細部にわたるトリートメントで、ストレスをほぐし、リフレッシュしていただけます。
安全・環境・文化の取り組みInitiatives for Safety, Environment and Culture
安全:逃げ出すのではなく、逃げ込める街へ
再開発前の六本木ヒルズの地は、木造低層住宅が密集し、細い路地が広がるエリアで、消防車などの緊急車両が入りにくい場所でした。このため、再開発によって安全で安心して暮らせる街をつくることも重要な目標の一つでした。そこで、耐震性に優れた建物への建て替えはもちろん、広域交通網の改善や歩車分離の推進など、安全な都市インフラを整備。細分化された土地を統合し、分散していた建物を集約して超高層化することで、地上にゆとりある道路や広いオープンスペースを生み出しました。
さらに、独自のエネルギープラントにより有事の際にも安定的な電力供給を実現するとともに、5,000人の帰宅困難者受け入れを想定した民間最大規模の備蓄品を用意。また、居住者や就業者による自治会では定期的に総合防災訓練も実施するなど、地震や災害時に「逃げ出す街」ではなく「逃げ込める街」として、ハードとソフトの両面で様々な取り組みを行っています。東日本大震災では、これらの先見的な取り組みが高く評価され、事業継続計画(BCP)における高い信頼性を獲得しています。
環境:脱炭素化社会の実現に向けて緑に覆われた街づくり
都市に豊かな緑は欠かせません。六本木ヒルズでは「都市と自然の共生」を実現する街づくりの一環として、緑地の拡充に取り組んできました。毛利庭園を中心に広がる緑地や、けやき坂コンプレックスには水田のある屋上庭園を設置するなど、都市緑化を積極的に推進しています。また、水田では地域の皆さんと稲作を行うなど、緑地をコミュニティ活動の場としても活用しています。
現在、六本木ヒルズの敷地は港区平均緑被率の約1.4倍となる約31%(2022年時点)が緑で覆われています。この緑化空間は、周辺道路のアスファルト舗装に比べて、表面温度が日中で5℃~15℃低くなっており、ヒートアイランド現象の緩和にも貢献しています。
さらも、2019年にはオフィス賃貸事業者として国内で初めて、六本木ヒルズ森タワーで入居テナントへ再生可能エネルギー電気の供給を開始するなど、脱炭素化社会の実現に向けた取り組みも推進しています。
文化:アジアを代表するアートの拠点
六本木ヒルズのコンセプト「文化都心」の象徴として、街の中心に位置する森タワーの最上層部(49~53階)には、森美術館や会員制クラブ、ギャラリーなどが集積する文化拠点を設けました。これは、世界が工業化社会から知識情報社会へと変容していく中では、経済力だけでなく「文化・芸術」の力こそが街の“磁力”になるという当社の理念を具現化したものです。街の各所には様々なアートを展示し、暮らしや仕事の傍らで気軽にアートや文化に触れ、楽しめる豊かな社会の実現を目指しました。20人以上の世界的なアーティストやデザイナーに特別に制作を依頼したパブリックアートやストリートファニチャーは、カラフルな彩りを街に添え、楽しい散策を提供するほか、文化都心の形成に積極的な役割を果たしています。
また、アートやパフォーマンス、音楽など多彩なジャンルで開催する街のイベントは、常に「本物」の文化を届けるという意識のもと、世界各国からアーティストを招いた「クリスマスコンサート」や「ストレンジフルーツ」などに代表されるパフォーマーを招聘。開業当初から採用しているLEDを採用した「クリスマスイルミネーション」は、当時画期的だった寒色系の色合いで、冬の景色を一変させました。
六本木ヒルズの開業以降、六本木には国立新美術館、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHTなどの美術館やギャラリーが相次いで開業しています。2009年からは、約70万人が集う一夜限りのアートの饗宴「六本木アートナイト」が開催されるなど、六本木はアジアを代表するアートの拠点として、その磁力を高めています。
コミュニティ
都心部における地域内の交流や人と人のつながりの希薄化が懸念される一方で、エリアマネジメントやタウンマネジメントといった仕組みが注目を集める昨今、六本木ヒルズでも「街」としての広がりある活動を重視してまいりました。この街に集う様々な人々の横の連携を図り、周辺の町会とも連動しながら地域活動の中核として街づくりをさらに推進するものとして「六本木ヒルズ自治会」を発足させました。当自治会は、17年に及ぶ市街地再開発事業を主導してきた「六本木六丁目地区市街地再開発組合」の基盤を継承しながら、新たにこの街に暮らす住人や店舗、企業などを迎えて立ち上げたものです。
当自治会では、防災・防犯といった街ぐるみのセキュリティ強化に加えて、複合都市・六本木ヒルズならではの、国籍も職業も年齢も多様な人々が地域活動に積極的に参加できる、開かれたコミュニティを形成することを目的としています。
建築家・デザイナーArchitects and Designers
インタビュー
「文化都心」に相応しい国際的なデザイナーを起用しています。