森ビル株式会社(東京都港区 代表取締役社長 辻慎吾)では、東京23区内で1986年以降に竣工した事務所延床面積10,000m²以上のオフィスビル(以下「大規模オフィスビル」)を対象に、需給動向に関する調査を1986年から継続して実施しています。この度、2025年版の調査結果がまとまりましたので、報告いたします。
今後5年間の年平均供給量は過去平均を下回る一方、「大規模化」と「主要エリアへの集積」は加速
東京23区の大規模オフィスビルの供給量について、今後5年間の年平均供給量は過去平均(1986~2024年)を下回る見込みとなり、今後の供給によるオフィスマーケットへの影響は限定的と想定されます。一方、「事務所延床面積10万m²以上の物件」の供給割合は2025年が74%、2028年が80%、2029年が91%と増加傾向にあり、引き続きオフィスの「大規模化」が見込まれます。

エリア別では都心5区の供給割合が今後5年間で86%と、過去10年平均(85%)とほぼ同じ割合を見込んでいます。また、23区全体の今後5年間の総供給量(459万m²)に対する主要ビジネスエリアにおける供給量(342万m²)は75%であり、引き続き「都心部へのオフィス集積」が進展する見込みです。特に大規模開発が進む「日本橋・八重洲・京橋」「品川」「赤坂・六本木」エリアでの供給増加が顕著です。

吸収量は昨年同様に100万m²を超え、空室率は大幅に低下
2024年の東京23区の吸収量は113万m²と、昨年同様に100万m²超の水準に達しました。あわせて、空室率は2023年末から2.1p低下の3.7%、主要ビジネスエリアでは2.9p低下の3.3%と、いずれも大幅に低下しました。昨今の立地やビルグレード改善、イノベーティブなオフィス環境づくりへの企業ニーズは底堅く、大幅な景気減速などが生じない限り、オフィス需要は引き続き力強さを維持し、空室率も低下基調が続くものと想定されます。

当社が昨年12月に発表した「東京23区オフィスニーズ調査」によると、賃借面積拡大意向は58%であり、新規賃借理由として「立地が良く・設備グレードが整っているビルへの移転」「新部署設置、業容・人員拡大」などが挙げられており、オフィスへの積極的な投資を検討している企業の増加を背景に、旺盛なオフィス需要が継続しています。
また、多くの企業が「本社オフィスの存在意義や求められる機能・役割」として「社内コミュニケーション・コラボレーションの強化」「従業員のエンゲージメント向上」「災害など有事における本部機能」などを挙げており、引き続きハード・ソフト両面の商品力を備えた物件に需要が集まる傾向が加速するものと思われます。