虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー
Toranomon Hills Business Tower
開発経緯History
「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」は、虎ノ門一丁目地区第一種市街地再開発事業として、森ビルをはじめ約30件の地権者と進めた再開発事業です。森ビルは、1950年代後半から、地元である新橋・虎ノ門地区に集中的にオフィスビルを建設し、通称ナンバービルと呼ばれるオフィスビルの賃貸事業を営んでいました。「虎ノ門10森ビル」「虎ノ門12森ビル」を始め、地区内には旧耐震基準や老朽化した建物が多いにもかかわらず、道路幅員も狭く個別の建替えも進めづらい状況でした。
2009年から5地権者とともに勉強会を始め、2015年に新駅「虎ノ門ヒルズ駅」の整備や、虎ノ門駅前地区第一種市街地再開発事業と合わせて国家戦略特別区域における区域計画の内閣総理大臣認定を受け、2020年1月に竣工しました。
同年6月には、東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」が開業し、本事業で整備した地下通路も全区間で供用を開始しました。地権者や関係者の協力と支援により、都市計画決定から約4年半という異例の速さで竣工することができました。
開発経緯年表
計画概要Project Overview
当地区は、事務所や住宅のほか、飲食店や江戸時代に創業された呉服店、昭和の初めよりこの地で活動してきた日本基督教団芝教会がありました。また高度経済成長期に森ビルが当時の地権者と共同事業として建設した第10森ビルなども建っており、これらナンバービルにとっては2度目の再開発、いわば「再々開発」と言えます。
施設建築物として、地上36階建ての高層棟(虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー)と、地上3階建てで天井高10mの礼拝堂をもつ教会棟(日本基教団芝教会)を整備。高層棟は、総貸室面積約96,000mの大規模オフィスと約7,600mの商業施設、インキュベーションセンター「ARCH」などを有します。
また、地区内の細街路を廃止し、従前5つあった街区を約1haのひとつの街区に編成するとともに、地域に不足していた公園(区立西桜公園)を整備しました。1階には、地下通路(全長約370m)により日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」、銀座線「虎ノ門駅」とつながるバスターミナルを整備。バスターミナルには、都心部と臨海部を結ぶ東京BRTや空港へのバスが発着します。さらに、周辺とつながる歩行者デッキも整備するなど、東京都長期ビジョンに掲げられた、虎ノ門の交通結節機能の強化を図り、新たな「東京の玄関口」へと生まれ変わりました。
施設概要Facility Overview
羽田空港への好アクセスを誇る、総貸室面積約96,000m²の大規模オフィス
オフィスフロアは5階~36階を占め、総貸室面積は約96,000m²、基準階貸室面積は約3,000m²です。全方位に約20mの奥行きを有する整形な無柱空間と、床から天井までのフルハイトサッシが、明るく開放的な執務スペースと、ワークスタイルに合わせた自由なオフィスレイアウトを可能にしています。また、各階の共用部には、社員同士のコミュニケーションの場となる大きなリフレッシュコーナーを設置。さらに、防災備蓄倉庫を各階に配することで、万が一の有事への備えにも配慮しています。
「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」は、日比谷線新駅「虎ノ門ヒルズ駅」や銀座線「虎ノ門駅」とも地下通路で連結し、1階部分には空港リムジンバスや都心部と臨海部を結ぶBRT(バス高速輸送システム)も発着可能なバスターミナルも設置。さらに虎ノ門ヒルズ 森タワーの地下を走る環状二号線が全面開通すれば、羽田空港へはわずか25分でアクセス可能になり、グローバルに事業展開する企業に欠かせない利便性と交通アクセスを実現します。
日本独自のイノベーションエコシステムの拠点となるインキュベーションセンター「ARCH」
4階には、「グローバルビジネスセンター」の重要な構成要素のひとつとなる、約3,800m²の大規模会員制インキュベーションセンター「ARCH」が誕生。
施設内には、ミーティングルーム、コワークスペース、スクールルームなどを設置し、施設の企画運営には、米国シリコンバレーを本拠地として、ベンチャー投資・育成事業のほか、大企業の事業創出支援などを手掛ける「WiL」が参画。大企業の新規事業創出実績のあるエキスパートが会員同士のコミュニケーションを促進しながら、新規事業創出に必要となる様々なノウハウ、サービス、教育プログラム、啓発イベントなどを提供し、強力にバックアップしていきます。
この施設は、人・モノ・金・情報などの豊富なリソースを持つ大企業内部における事業改革や新規事業創出を支援することで、日本独自のイノベーションエコシステムの拠点となることを目指します。「ARCH」は、国内外の様々な産業分野の多様なプレーヤーをつなぎ、創発し、東京発のイノベーションを広く世界に発信していきます。
グローバルプレーヤーの衣食住をサポートする商業施設
地下1階~地上3階には、飲食から物販・サービスまで、グローバルプレーヤーの衣食住をサポートする、計58店舗(約7,600m²)の商業空間が誕生します。
地下1階には、毎日の「健康」と「美味しさ」を提供する高品質なスーパーマーケットやカジュアルな飲食店、1階には、ビジネスシーンに不可欠な"おもたせ"を虎ノ門ヒルズらしく編集した和菓子、スイーツ、ワインなどの店舗を集積。2階には、これまでの虎ノ門エリアにはなかった、エリア初の物販フロアが登場します。さらに3階には、ランチから会食まで幅広い利用が可能なレストランに加えて、東京中の名店が一堂に集まる食のランドマーク「虎ノ門横丁」を開設し、これまでにない新しい食の楽しみ方を提案します。

「東京の玄関口」となる新たな交通結節点
1階には、日比谷線新駅「虎ノ門ヒルズ駅」や銀座線「虎ノ門駅」に直結する、約1,000m²のバスターミナルを開設。空港リムジンバスや都心と臨海部を結ぶBRT(高速バス輸送システムBRT)が発着可能となります。
加えて、2階には「虎ノ門ヒルズ 森タワー」と連結する歩行者デッキを設置。環状二号線の開通とともに誕生した「新虎通り」を含め、エリア全体をつなぐ歩行者ネットワークと、新たな人の流れを創出します。さらに、環状二号線が全面開通すれば、羽田空港へのアクセスも大幅に向上します。「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」は、世界と都心部を繋ぐ新たな「東京の玄関口」として機能します。
建築デザイン・パブリックアート
建築デザインは、クリストフ・インゲンホーフェン氏(インゲンホーフェン・アソシエイツ)が担当。虎ノ門ヒルズ 森タワーとの調和を考え、国際的なビジネス拠点にふさわしいデザインになっています。商業施設やARCHのインテリアデザインは片山正通氏(ワンダーウォール代表)が手掛け、虎ノ門の歴史や伝統を受け継ぎながらも、現代的な要素を取り込んだ空間を実現しています。
また、オフィスロビーや商業エントランスなどには、世界で活躍するアジアの現代美術作家3名(森万里子氏、秋吉風人氏、ツァン・キンワー氏)による立体作品や絵画、インスタレーションなどのパブリックアートを設置し、訪れる人をお迎えします。
オフィスロビー:森万里子《Cycloid Ⅴ》2018年(立体作品)
独自のエネルギーネットワークを構築
地下3階には、虎ノ門ヒルズ内に、電気と熱を供給する独自のエネルギープラントを設置。エネルギー利用の効率化と防災機能を強化するために、ガスコージェネレーションシステム(CGS)などの自家発電システムや、大規模水蓄熱槽・廃熱利用設備を活用した高効率熱製造システムを導入し、環境に配慮したエネルギーネットワークを構築します。
また、災害時においても都市機能の継続に必要な電気・熱の供給を実現しており、グローバルビジネスセンターの安心・安全面にも貢献します。

電気・熱の供給エリア
建築家・デザイナーArchitects and Designers
外観デザインには、ドイツ出身の建築家クリストフ・インゲンホーフェンを起用。同じくインゲンホーフェン氏が担当した「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」と一体的にデザインすることで調和を図り、ランドマークとしての視認性も高めました。