森ビル株式会社

9.完成へ

1)完成引渡し

平成15年(2003)4月1日、一部土木工事や建築工事は残ったものの、なんとか施工者から建物の引受けを行い、組合員への鍵の引渡しを行うことが出来ました。鍵の引き受けにきた組合員の笑顔を見て、この日のために17年間やってきたのだと実感出来た1日でした。
住宅の鍵の引受けにきた組合員の中には親の位牌を持参してきた人が何人かいました。「再開発を楽しみにしていながら間に合わなかった親に、完成した住宅を見せてあげようと。自分たちの引越しは来週だけど、親は今日から入居させてあげようと思ってね。」
17年間はあまりに長い。都市計画決定当時、60代のご婦人から「30代の1年の価値と60代の1年の価値は違う。森ビルは寿命との競争。だからひと月でも1週間でも1日でも1時間でも早く完成するように進めてね。」と言われていました。
この再開発では意外なことに高齢な人ほど最初から賛成してくれる人が多かったのです。呼びかけ当時に80代の親から「良く分からないが、再開発というのはいろいろな意味で良い話のようだ。おまえたちの世代の話なのだから良く話を聞いたほうがいい。」と言われて話を聞いてくれた50代の人もいました。最初に賛成して「孫、子の世代のために」と積極的に話し合いに応じてくれたお年寄り達の多くが完成までに鬼籍に移りました。再開発の中心になって進めてくれた再開発組合の理事たちもその多くが70代になっていました。

2)竣工式

竣工式(平成15年4月7日)
竣工式(平成15年4月7日)

平成15年4月7日、六本木ヒルズ森タワー15階において、六本木ヒルズの竣工式が行われました。神事には約1,000名が参加。その後の直会で原理事長は再開発に対する思いを語りました。「実に17年という歳月が流れ、ようやく完成しました。従前は防災面からも危険性を指摘された地区で戦前の空襲で一面焼けた地区であるにもかかわらず、戦後の復興過程において道路の幅も広がらず、狭い道路に小さな建物が建て詰まる街でした。そこに再開発事業によって広い道路、公園、広場が出来上がりました。建物を超高層化することによって、森ビルの権利を確保しながら六本木ヒルズアリーナや毛利庭園をはじめ、様々な広場、空間を創ることが出来ました。備蓄倉庫、防火水槽も整備しました。再開発前に比べると飛躍的に安全な街づくりを実現出来たと思います。」

3)グランドオープン

グランドオープン
グランドオープン

六本木ヒルズのグランドオープンは4月25日。それに先立ち4月22日に六本木ヒルズアリーナにて約1,000名の来賓を招き、オープニングセレモ二-が行われました。
来賓として出席した小泉純―郎首相、扇千景国土交通大臣(当時)、石原慎太郎東京都知事から祝辞をいただき、坂本龍一氏作曲による六本木ヒルズのテーマソング「the land song」の流れる中、原保理事長と森稔森ビル社長によるトーチの交換が行われました。事業施行者から街の運営者にバトンが渡された瞬間でした。
4月25日グランドオープン。午前10時の開業を告げる号砲と共に多くの風船が空高く解き放たれ、街は開かれました。
文化都心、アートとインテリジェンスが融合する「アーテリジェント・シティ」は、ワンアンドオンリーを目指す店舗群とあいまって世の中に賞賛を持って迎えられました。来街者数は予想以上であり開業3日間の来街者数は約95万人、開業56日目にして来街者数1,000万人を越え、現在、年間来街者数4,000万人を突破しています。