森ビル株式会社が株式会社構造計画研究所と2008年に共同開発した「超高層ビル用火災時避難シミュレーションシステム」が、この度、特許権を取得しました。本システムは、火災発生時の避難完了時間や避難者密度など、多方面から避難安全性を評価することが可能で、より現実に即した避難計画立案に有効なシステムです。この度、東京消防庁が指針を発表した火災時の避難誘導用エレベーターの活用を想定した避難計画の検証にも対応しています。

システムの特長および有効性
・設計段階から避難時に問題となる箇所を特定することで、安全性の高いビルづくりを実現
・個人特性(例:障害者、高齢者などの避難弱者)を考慮した避難計画の作成および、エレベータを活用した避難検証も可能
・評価結果要因を特定し、迅速かつ安全性の高い有用な避難計画の作成が可能
・シミュレーション画面を活用することで在館者への避難計画(避難誘導方法や避難時ルール)の周知および教育に有用

関心が高まる、「エレベーターを利用した避難計画」の検証にも有効

本年10月1日より、東京消防庁管内の高層ビルや高層マンションで火災が発生した際、高齢者や障害者などの歩行困難者に限り、一定条件のもとで非常用エレベーターによる避難が可能となりました。
森ビルでは、安全・安心な街づくりを目指し、建物の耐震性能や防火設備の充実をはじめ、定期的な防災訓練の実施など、ハード・ソフト両面から様々な対策を講じており、さらに長周期地震動に対応したエレベーターの安全システムを独自開発するなど、新たな技術やシステムの研究・開発にも積極的に取り組んでいます。
2007年、当時はまだ認められていなかったエレベーター利用避難も視野に入れ、構造計画研究所と本システムの共同研究を開始。システム開発後(2008年)は、混雑や混乱を回避する有効な避難誘導の検証、避難計画の再検討を進めるとともに、エレベーター避難の有用性についても検証をしてまいりました。
当社が管理運営する中国・上海の超高層ビル「上海環球金融中心」(地上101階、高さ492m)では、歩行避難の補助手段として、一定条件のなかでエレベーターを利用した避難計画をすでに導入しています。

本システムを活用することで、混雑や混乱を回避する有効な避難誘導の検証なども進め、今後のプロジェクトにおける設計段階での反映と共に、より有効な避難計画の立案に役立ててまいります。

「超高層ビル用火災時避難シミュレーションシステム」概要

従来の避難安全性の評価法は、利用者情報、建物の規模・間取り情報などを略算式に入力して避難完了時間を求めるという手法でしたが、本システムでは、避難者の一人一人の行動特性を緻密にモデル化し、避難中の各個人が、その場の状況に応じて意思決定し行動する状態を逐次再現することで、より現実に即したシミュレーションが可能です。

従来の避難安全性の評価法
利用者情報(在館者密度)、建物情報(室・廊下の大きさ、出口の幅、階高など)を入力することにより、避難完了時間を簡易的に算出

超高層ビル用火災時避難シミュレーションシステムによる評価法
・避難者ひとりひとりをモデル化し、特性(歩行速度等)の違いを設定
・実際の建物形状を入力
上記により任意の時点における避難状況および局所的な混雑の集中などの視覚的な確認と、その要因の特定や、火災発生告知のタイミング、避難誘導の有無など様々なシナリオを想定した検証が可能。

シミューレーションシステム<サンプル画面>

避難手段、各階の在籍者数などによる時間毎の避難状況変化を確認することができる。 
※避難開始後の建物出口付近の様子を検証

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