虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業は、生物多様性の保全や回復に資する取り組みを定量評価する認証であるJHEP認証(※)において、日本初となる最高ランク(AAA)を取得いたしました。
※「事業前の過去の状況」と「事業後の状況」とを、植生や当該地域を指標する野生の生きもの(評価種)にとっての住みやすさから自然の価値を比較し、その差を評価、ランク付けするもの。詳細は下記参照

開発段階から環境に配慮した取り組みを:生物多様性に配慮した質の高い緑地計画

虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業は、国際性・文化性豊かな「大街区」における新たな複合機能拠点としての街づくりを進めています。当事業は、「緑の生活都心」をコンセプトに掲げ、土地の高度利用により新たに生み出される空地を広場や緑地として整備し、潤いある都市空間の創出を目指し、開発段階から環境に配慮した様々な取り組みを行っています。生物多様性に配慮した質の高い緑地計画は、その代表的な取り組みのひとつです。

都市再開発に生物多様性の視点を取り入れた日本初の試み

緑地計画作成にあたっては、現況調査や文献調査をもとに設定した在来種や潜在自然植生に配慮し、地域の自然の再生を目指しました。
都市再開発における緑地計画に対し、生物多様性の観点を取り入れた手法(JHEP認証)を用いて評価する取り組みは、日本で初めての試みです。評価の結果、本計画が過去30年間における緑地の価値を大きく上回るものとなり、AAA(最高ランク)の認証取得へと至りました。

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虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業
外観イメージ(2009年10月着工、2012年6月竣工予定)

当事業に参加組合員として参加する森ビルは、2008年5月、国連生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)の「ビジネスと生物多様性イニシアチブ(Business and Biodiversity Initiative)」に参加し、「優良企業の生物多様性リーダーシップ宣言」に署名いたしました。
愛知・名古屋で開催される「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」を来年に控え、生物多様性に対する関心はますます高まりを見せています。森ビルは、当事業が今後の都市緑化におけるリーディング・プロジェクトとなるよう努めるとともに、都市域におけるエコロジカル・ネットワークを構築し、生物多様性に配慮した街のモデルづくりを進めてまいります。

虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業における生物多様性への取り組み

当事業は、以下の点において生物多様性の保全や回復に貢献しています。

1.在来種・潜在自然植生をベースとした緑地:計画地の地域植生を再生する
 ※主な在来種:スダジイ、タブノキ、アラカシ、エゴノキ、ヤマボウシ ほか
2.まとまりのある緑地:緑化効果を高め周囲と結ぶ
3.緑被ボリュームの高い立体的な緑地:生きものの住みやすさに貢献する
4.特殊な環境要素:枯れ木・樹洞・落ち葉といった環境要素への配慮

評価にあたっては、権利変換計画が行われた2009年を基準年とし、過去と将来50年を比較し、生物多様性への貢献度を「総ハビタット価値(※)」という値をもとに定量評価しています。
※総ハビタット価値:緑の質である「動物評価種の住みやすさ」と「みどりの地域らしさ」に対し、緑の量と時間を乗じた値として算出する

当事業において得られる総ハビタット価値は37.6(縦軸)であり、これを計画前の数値と比較するとその差(評価値)は26.6(横軸)となります。これらの数値から、当事業の実施前後で、生物多様性の観点から見た緑地の価値が大きく高まることがわかり、JHEP認証の手法を用いたランク付けにおいては、最高ランクであるAAAの認証を受けています。

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ハビタット評価認証(HEP: Habitat Evaluation Procedure)
1980年代に米国内務省により開発された、ハビタット(野生生物の生息地)の観点から自然環境を定量的に評価する手法。客観性や再現性、分かりやすさなど、合意形成ツールとしての優れた特長が評価され、現在、米国の環境アセスメントや自然再生事業において最も広く使われる手法となっている。
JHEPは、HEPの環境評価手法をもとに、(財)日本生態系協会が日本において企業等の取り組みを評価できるよう改良を加えて新たに構築したもの。生物多様性の保全や回復に資する取り組みを客観的に定量評価し、ランク付けした認証を行うことで、効果的な取り組みを普及させることを目的としている。