森ビル株式会社が運営する森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)は、2008年10月18日、開館5周年を迎えます。

【六本木がアートの街となる先駆けに】
森美術館は、2003年10月18日に開館、六本木ヒルズ森タワーの最上層に位置し、六本木ヒルズの「文化都心」というコンセプトの象徴的役割を果たしてきました。開館以来、「アート&ライフ」をテーマに、現代アートを中心に建築、デザイン、ファッションを紹介する展覧会を開催し、5年間で合わせて665万人以上のお客様にご来館いただきました。
現在六本木は、アートの街として確立しつつありますが、森美術館は、六本木地区の他の美術館の先陣をきって開館し、その先駆けとなりました。

【現代アートの発信拠点として ~常にユニークな視点で企画】
開館記念展の『ハピネス:アートにみる幸福への鍵』(2003年)では、すべての人にとって身近な「幸福」をテーマに、6世紀から19世紀までの日本美術・アジア古典美術、西洋美術、現代アートまでを同じ空間に展示し、その展示方法が話題になりました。また、『アフリカ・リミックス:多様化するアフリカ現代美術』展(2006年)や次回展の『チャロー・インディア:インド美術の新時代』(2008年)では、フィールド・リサーチをもとにユニークな展覧会を企画し、日本では紹介される機会の少なかった作品を紹介しています。
一方で、これまでに2回行なった『六本木クロッシング』展(2004年、2007年)は、日本のアートシーンの動向に注目する森美術館独自の企画展として、日本で活躍するアーティストを国内外に紹介する貴重な役割を果たしています。日本の現代アートの情報をリアルタイムで発信するという意味でも海外から注目されています。
また、海外の美術館との連携にも力を入れており、『杉本博司:時間の終わり』展(2005年)や『東京-ベルリン/ベルリン-東京展』(2006年)は、森美術館発で、海外巡回を果たしています。その一方で、世界を代表する海外の美術館で開催された、『英国美術の現在史:ターナー賞の歩み』展(2008年、テート・ギャラリー)や『アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち』展(開催中、ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館)は、日本での唯一の巡回館となりました。
さらに、これから活躍する若手アーティストを支援するプロジェクトシリーズとして、「MAMプロジェクト」を展開し、これまでに合わせて8回の展覧会を開催しています。

【開かれた美術館を目指して】
各展覧会では、多彩なパブリックプログラム(教育普及活動)を積極的に開催しています。例えば、ベビーカーに赤ちゃんを乗せて親子で展示を楽しむツアー「おやこでアート」は、赤ちゃん同伴の受け入れ体制を整え、これまで美術館に足を運ぶことを遠慮していた人などにも開かれた美術館を目指しています。さらに視覚や聴覚に障害を持つ方々へのプログラムのほか、港区内を中心に、幼稚園や福祉施設などと連携し、コミュニティに根ざした活動も行ってきました。
また、開館当時としては珍しい夜間開館(夜22時まで)を実施し、都心において、仕事帰りに行くことができる美術館として新しいライフスタイルの創出に貢献しました。展示の説明やカタログなどについても、当初からバイリンガル(英語)対応を充実させ、六本木ヒルズという国際的で文化を発信する街にふさわしく、在日外国人や海外のお客様のニーズに応えてきました。
さらに、近隣にある国立新美術館、サントリー美術館と共に「六本木アート・トライアングル」を形成し、六本木エリアをアートの拠点として盛り上げていくために、六本木地区のアートマップの制作を行い、相互割引を実施するなど様々な連携に取り組んでいます。

【今後の取り組みについて】
森ビルは、「ヴァーティカル・ガーデン・シティ-立体的な緑園都市」をコンセプトに、職・住・商・憩・遊・学・育・医といった様々な機能を組み合わせたコンパクトシティに、美術館を始めとして、コンサートホールや会員制クラブ、社会人教育施設など様々な文化装置を集約し、都市における、人々との出会い、交流、対話を育んでいます。
そのような中で、日本と海外双方をアートによってつなぎ文化外交の一役を担うこと、日本およびアジア地域のアーティストを国際的な舞台にのせていくことは日本の美術館の重要な使命のひとつだと考えています。森美術館では、今後も、「文化都心」六本木ヒルズの象徴として、日本やアジア地域のアートの紹介に力を注いでいくと共に、既存の美術館のあり方にとらわれず、諸外国のトップレベルの美術館と対等の活動を目指して参ります。

次回展覧会  「チャロー!インディア:インド美術の新時代」
2008年11月22日(土)~2009年3月15日(日)
デリー、ムンバイ、バンガロール、ヴァドーラといった都市を拠点に活躍する27組のアーティストによる絵画、彫刻、写真、インスタレーションなど多岐にわたる作品を通して、国際的に大きな注目を集めているインド現代美術の「今」を探ります。

 

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『ハピネス:アートにみる幸福への鍵』展
(2003年)

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『六本木クロッシング2007:未来への躍動』展
(2007年)

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「おやこでアート」の様子

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小学生を対象としたツアーの様子