森美術館は、このたび、約4か月にわたる改修工事期間を経て、2015年4月25日(土)にリニューアルオープンします。
2003年10月の開館から11年半、グローバリゼーションの波は経済・政治情勢だけでなく、文化、とりわけ美術にも波及しています。アジアを見渡せば、香港、シンガポールでは現代アートの市場が活況を呈し、国際的なオークションやアートフェアでは、アジアのアートが圧倒的な存在感を示すようになりました。シンガポールには来たる10月に巨大な国立美術館が誕生し、香港では2018年に大型の現代美術館が登場します。
このように、現代アートのグローバル化の様相がますます多様化し複雑さを増すなか、多くの現代美術館は、世界のさまざまな地域の多様なアートをいかに理解し、歴史の上に位置付け、広く一般の人々に紹介していくのか、という新たな課題に直面しています。
森美術館はこうした状況を踏まえ、開館10周年を迎えた2013年10月に館のミッションとビジョンを改め、日本、アジア、そしてグローバルなアートシーンにおいての自らの役割と方向性を明らかにしました。
その実現のため、今般の施設改修では、多様化する現代美術の表現に柔軟に対応できるよう、展示空間の高機能化を図りました。さらに、三つの小プログラムを開始するほか、ミュージアムカフェ&レストランにおける現代アート作品設置の監修など新たな活動を通して、現代アートをより深く、また多角的に体験する場を創出してまいります。
創設者、森稔の志「個性的であること、ほかと異なること、新しいことに挑戦し続けること」を受け継ぎながら、独自の視点をもって新しい時代の美術館像を提示し、より創造的で革新に満ちた「アート&ライフ」の実現に貢献していきたいと思います。

森美術館館長 南條史生

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企画展のご紹介

■企画展1:森美術館リニューアルオープン記念「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか
2015年4月25日(土)~7月5日(日)

森美術館×ポンピドゥー・センター・メス×エルメス財団、共同企画!
19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパでは数学、機械工学、生物学、地質学や考古学の探求の中で「シンプルなかたち」の美学が再認識され、工業製品や建築のデザインなどに多大な影響を与えました。同様に、その品格ある魅力は多くのアーティスト達を魅了し、近代美術の多数の名作を生み出しました。
一方、このような単純で美しい「シンプルなかたち」は、自然の中や、世界各国のプリミティブアート、民俗芸術、伝統文化の中にも、数多く見出すことができます。日本においては、工芸品や茶道具、仏像や禅画などに同様の美学が体現されています。
本展は、このような古今東西の「シンプルなかたち」約130点を9つのセクション(1.形而上学的風景、2.孤高の庵、3.宇宙と月、4.力学的なかたち、5.幾何学的なかたち、6.自然のかたち、7.生成のかたち、8.動物と人間、9.かたちの謎)で構成します。古くは先史時代の石器から、現代アーティストによるダイナミックで先鋭的なインスタレーションまで、地理的なひろがりと歴史的なつながりを示しながら展望し、時空を越えた普遍的な美を描き出します。「シンプルなかたち」が備える普遍的な美は、私たちが生きる上で真の豊かさとは何かを問い直すことでしょう。

【同時期に六本木ヒルズ森タワー52階で開催される展覧会】
スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン
 会期:2015年4月29日(水・祝)~6月28日(日)
 会場:六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内スカイギャラリー
連載完結記念 岸本斉史 NARUTO―ナルト―展
 会期:2015年4月25日(土)~6月28日(日)
 会場:森アーツセンターギャラリー

 

■企画展2:「ディン・Q・レ展:明日への記憶
2015年7月25日(土)~10月12日(月・祝)

世界で最も活躍するベトナム人アーティスト、待望の日本初個展
ディン・Q・レはカンボジアとの国境付近のハーティエンに生まれ、10歳の時、ポル・ポト派の侵攻を逃れるため、家族とともに渡米しました。写真とメディアアートを学んだ後、ベトナムの伝統的なゴザ編みから着想を得た、写真を裁断してタペストリー状に編む「フォト・ウィービング」シリーズ(1989年~)を発表し、一躍注目されることになります。また、レは綿密なリサーチとインタビューに基づき、人々が実体験として語る記憶に光を当てます。国際舞台への出世作となった映像インスタレーション作品《農民とヘリコプター》(2006年)では、自作のヘリコプターの開発に挑むベトナム人男性を中心に、ベトナム人と戦争との複雑な関係を巧みに描き出しました。
ベトナム戦争終結から40年、日本にとっては戦後70年の節目を迎えたいま、国家や社会の「公式な」歴史の陰で語られることのなかった市井の人々の名もなき物語を読み直しつつ、アートと社会のより密接な関わりを探ることはきわめて重要な課題ではないでしょうか。本展ではディン・Q・レの作品とユニークな活動を通して、私たちの過去と現在、そして未来について考えます。

【同時期に六本木ヒルズ森タワー52階で開催される展覧会】
「機動戦士ガンダム展 THE ART OF GUNDAM」
 会期:2015年7月18日(土)~9月27日(日)
 会場:森アーツセンターギャラリー

 

■企画展3:「村上隆の五百羅漢図展
2015年10月31日(土)~2016年3月6日(日)

国内では14年ぶりとなる村上隆の個展
村上隆(1962年生まれ)は、「オタク文化」と関連付けられるようなキャラクターを用いた各種作品だけでなく、「スーパーフラット」セオリーを提唱し、アートイベント「GEISAI」や若手アーティストのプロデュース、企業ブランドやミュージシャンとのコラボレーション、さらには映画やアニメ制作といった幅広い活動を展開する世界で最も活躍の著しい日本人アーティストの一人として知られます。ロサンゼルス現代美術館を皮切りに世界を巡回した「cMURAKAMI」展(2007年)、ヴェルサイユ宮殿での「MURAKAMI VERSAILLES」展(2010年)、カタールでの「Murakami - Ego」展(2012年)など、各国の美術館では大規模な個展が数多く開催されていますが、日本での本格的な展示は非常に限られており、今回の企画は待望の展覧会といえるでしょう。
本展は、東日本大震災を機に仕上げられた高さ3メートル、全長100メートルもの超絵画大作《五百羅漢図》(2012年)を中心に、最新の大型の彫刻作品や絵画作品なども含めて構成される予定です。日本初公開となる《五百羅漢図》は、有限の生と自然と宇宙の無限が交錯するダイナミックなヴィジョン、そこに込められた宗派を超えた祈りの力が注目され、作家の新たな関心と方向性を感じさせます。このように本展は、作家の最高傑作ともいわれる《五百羅漢図》等の作品を通して、社会の混乱と絶望と希望、宗教と芸術について、さらには、我々の住む世界、人間のリアリズムと本質に、芸術はどれだけ肉薄していけるかという村上隆の大いなる問いと、その創作に迫る極めて貴重な機会となるでしょう。

【同時期に六本木ヒルズ森タワー52階で開催される展覧会】
「フォスター+パートナーズ展」
 会期:2016年1月1日(金・祝)~2月14日(日)
 会場:六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内スカイギャラリー
「フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち」
 会期:2016年1月16日(土)~3月31日(木)
 会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)

 

ニュースリリース:【森美術館】2015.4.25 森美術館リニューアルオープン(PDF)