2008.03.22 【危険学からみた医療安全プロジェクトシンポジウム】
医療業界が他業界も交えて積極的に意見交換
過酷な労働や多大なペーパーワーク、訴訟問題など多くの問題を抱える医療業界。2007年度末の危険学プロジェクト報告会に先立つ3月22日(土)、「医療従事者の行動と思考」グループのグループ長でもある手取屋教授が中心となり、事故を防ぐことを目的に医療業界以外の広い視点も取り入れながら情報を共有、発信するためのシンポジウムが開催されました。科学ジャーナリストである小出五郎氏による司会進行のもと、手取屋教授のほか、東京大学循環器内科の永井教授、危険学プロジェクトの畑村代表、コンプライアンスに詳しい郷原信郎教授や日本航空協会の小林忍常務理事、日産自動車株式会社の渡辺義章常務執行役員を交えてパネルディスカッションも行われ、まさに医療業界と他業界との情報交換の場となりました。
法律がいつも万全なわけではない ―法律が患者の必要とする治療をやらさない―
VTRを通した事例紹介では、除細動器を看護師は使ってはいけないというコンプライアンスの壁によって初期手当てが遅れ、患者に障害が残ってしまったケースなどを紹介。このケースでは、夜中に心室細動を起こして緊急処置が必要になった患者に対し、当直医が看護師に除細動器の使用を指示したところ、「法的には医師でなければ操作ができない」と看護主任から指摘され、結果的に処置が遅れてしまったとのこと。緊急時の看護師による除細動器の使用を求めた医師に対し、病院は「コンプライアンスを重視し、看護師の使用は認めないのが適切」との結論に達しましたが、郷原教授は「法律は万全なわけではない。平時はできても有事には対応できない。過剰な法令遵守の姿勢は日本全体の問題になっている」と指摘。本当の意味でのコンプライアンスとは何かを考えさせられました。
ほかにも、手術中の器具の取り扱いに関するケアレスミスや、労働環境の不整備による薬の取り違えなどの事例を紹介。どうすればこうした事故が減らせるかについて、複雑な製造工程のなかでも安全対策を徹底する自動車業界や、ヒューマンエラーも想定し何重にも安全対策を施している航空業界など他業界の見知から、一目でミスに気付けるような器具の提案など様々なアイデアや意見が出され、小出五郎氏のコーディネートもあり、業界を超えた情報共有の場となりました。
さらに、質疑応答では、ステークホルダーとリスクに関する情報を共有するリスクコミュニケーションの大切さや、「安全」より「安心」が重要になる今後の社会状況についてなど、多様な意見が会場から上がり、活発な議論が交わされました。
マニュアルや法律は万全とは限りません。また、狭い領域のなかだけで物事を解決しようとしても見えなくなってしまうことが多々あります。本質的な安全を目指し、様々な見知から意見交換を行い、時には視点を変えて現状を見直す重要さを実感させるシンポジウムとなりました。
シンポジウム概要
マニュアルや法律は万全とは限りません。また、狭い領域のなかだけで物事を解決しようとしても見えなくなってしまうことが多々あります。本質的な安全を目指し、様々な見知から意見交換を行い、時には視点を変えて現状を見直す重要さを実感させるシンポジウムとなりました。
畑村洋太郎(工学院大学 教授、東京大学 名誉教授)
永井良三(東京大学医学部付属病院循環器内科 教授)
畑村洋太郎(工学院大学 教授、東京大学 名誉教授)
永井良三(東京大学医学部付属病院循環器内科 教授)
郷原信郎(桐蔭横浜大学法科大学院 教授、元検事)
小林忍(日本航空協会 常務理事)
渡辺義章(日産自動車株式会社 常務執行役員)
小出五郎(日本科学技術ジャーナリスト 会長)
(有)PREGIO 担当:大久保(携帯) 090-4746-8158
〒162-0835 東京都新宿区中町23-1-107
TEL:03-3406-0508/FAX:03-3269-3473/EMAIL:info@iryoanzen.com
医療安全プロジェクトウェブサイト
シンポジウムの様子はNHKの番組で放送されました
番組:BSフォーラム「危険学から見た医療の安全」
放送日時:4月19日(土) 16:00~16:54
放送局:NHK衛星第二テレビジョン(BS2)