「サンシャワー: 東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」同時開催プログラムのご案内です。

■MAMコレクション005:リサイクル& ビルド
戦後日本は、老朽化した建築や施設を壊し、最新技術を用いたものに置き換える、「スクラップ・アンド・ビルド」という方法で、発展を遂げてきました。10年単位という短いサイクルで都市を変化させるこの手法の裏には、技術信仰、経済優先、効率主義という「近代」的な思想がありますが、今日、その有効性は再検証されています。過去20年、建築のリノベーションが再注目されていることは、そのひとつの現われといえるでしょう。
本展は、今年のヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表作家として参加している岩崎貴宏、今年8月開催の「ヨコハマトリエンナーレ2017」に参加の宇治野宗輝、2012年紫綬褒章を受章した宮本隆司という、近年注目を集める日本人作家3人の作品を通じて、都市とリサイクルの関係に焦点をあてます。
ベニア板と中古家電製品の組み合わせにより、架空の都市が表現された宇治野のサウンド・スカルプチュア《ヴァーティカル・プライウッド・シティ》(2011年)、タオルや衣服の糸によるミニチュアの建築物が構築された岩崎の立体作品《Out of Disorder》(2007年)、拾い集めたダンボールで作られたホームレスの家を主題とした宮本の連作写真「ダンボールの家」(1994‐96年)。些細な日用品をリサイクルすることで作られたこれらの構造物は、カッコよさや時流、合理性からは外れたものかもしれませんが、独創性に溢れ、私たちが忘れてしまいがちなものを思い出させてくれることでしょう。

■MAMスクリーン006:カミーユ・アンロ
カミーユ・アンロの制作手法は、映像、彫刻、ドローイング、インスタレーションなど多岐に渡っています。アンロは人類学、文学、博物学など幅広い分野からインスピレーションを受け、知識が記録される方法、さらには知識が様々な文化を通じて変容する様子について、ユニークな見解を示します。彼女がこのようなテーマを探究する背景には、「デジタル」の隆盛が、自然界から精神世界に至るまで、すべてのものと私たちの関係性を変貌させたことへの気付きがあるといえます。
本展では、アンロが2002年から2011年までに制作した短編映像9本を一挙に紹介、約50分のプログラムとして上映します。記憶、映画、文化的対話に関する前提自体に疑問を投げかけ、鑑賞者が世界を理解するための常識について再考するように仕向ける作品群は、私たちに新しいものの見方を提示してくれるでしょう。

■MAMリサーチ005:中国現代写真の現場—三影堂撮影芸術中心
中国人と日本人の写真家ユニット榮榮&映里(ロンロン・アンド・インリ)は北京を拠点に2000年より共同制作を始め、生活に根ざした姿勢で、二人の家族が増えていく様子や、変わりゆく中国の風景、破壊される環境などに目を向けながら写真を撮り続けてきました。
2007年、榮榮&映里は、写真のための複合施設である「三影堂撮影芸術中心」を設立します。「三影堂」の名前は「道は一を生み、一は二を生み、二は三を生み、三は万物を生む」という老子の言葉に由来します。写真(影)が無数の可能性を生む場所になることを望んで作られたこのユニークな写真センターは、建築デザインをアーティストのアイ・ウェイウェイ(艾未未)が手がけ、ギャラリーや暗室、図書室等の設備を備えた画期的なものでした。2009年からは中国の若手写真家の発掘と育成を目的とした「三影堂撮影賞」を開始。その後も展覧会やレクチャー、ワークショップなど多様な活動を積極的に行ってきました。2015年には福建省厦門(アモイ)市に三影堂の分館がオープンし、活動の場はさらに広がっています。
本展では、三影堂の10年間を振り返り、その活動を紹介、また美術史家のウー・ホン(巫鴻)氏と協働し、中国現代写真史における三影堂の役割についても考察します。