森美術館は、2017年2月4日(土)から6月11日(日)まで、インド人アーティストN・S・ハルシャの初の大規模個展となる「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」を開催します。

N・S・ハルシャは1969年、南インドの古都マイスールに生まれ、現在も同地を拠点に活動しています。南インドの伝統文化や自然環境と真摯に向き合うN・S・ハルシャの独自の創作姿勢は、インド現代美術が経済成長とともに国際的注目を浴びるなか高く評価され、これまで数多くの国際展に参加してきました。絵画を中心に多彩な表現技法を駆使した作品に通底するのは、ひとの身体に象徴される小ミクロコスモス宇宙と森羅万象を包む大マクロコスモス宇宙を同時に捉える世界観、そしてこの世の不条理へと向けられた観察者の視点です。

本展では、1995年以降の主要作品約70点(新作を含む)を通し、アーティストの20年間にわたる実践を見つめます。タイトルにある「旅(ジャーニー)」は、アーティストの人生の歩みだけでなく、マイスールから見たインドの経済発展、伝統と現代の往来、日常の営みから宇宙的視点への拡がりなど、多様な「旅」を示唆します。世相や状況を批評的かつユーモラスに描くことにより、N・S・ハルシャはこの世の皮肉も愛も逆説もすべて含んだ魅力を「チャーミングな旅」として伝えてくれるのです。
マイスールというローカルな地点に根差したN・S・ハルシャの視点は、これまで主流だった欧米的な近現代美術の解釈や枠組みからアートを解放し、時空間を超え、より普遍的なものへと導いてくれるでしょう。

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《宇宙情報処理センターでの名優》2015年
アクリル、キャンバス 190x150cm
Courtesy: Victoria Miro, London