森美術館は、2015年7月25日(土)から10月12日(月・祝)まで、ベトナム人アーティスト、ディン・Q・レのアジアにおける初の大規模個展となる「ディン・Q・レ展:明日への記憶」を開催します。
ディン・Q・レはカンボジアとの国境付近のハーティエンに生まれ、10歳の時、ポル・ポト派の侵攻を逃れるため、家族とともに渡米しました。写真とメディアアートを学んだ後、ベトナムの伝統的なゴザ編みから着想を得た、写真を裁断してタペストリー状に編む「フォト・ウィービング」シリーズ(1989年~)を発表し、一躍注目されることになります。また、レは綿密なリサーチとインタビューに基づき、人々が実体験として語る記憶に光を当てます。国際舞台への出世作となった映像インスタレーション作品《農民とヘリコプター》(2006年)では、自作のヘリコプターの開発に挑むベトナム人男性を中心に、ベトナム人と戦争との複雑な関係を巧みに描き出しました。本展では、ディン・Q・レの初期作品から最新の映像インスタレーションまで、代表作25点を展示します。
ベトナム戦争終結から40年、日本にとっては戦後70年の節目を迎えたいま、国家や社会の「公式な」歴史の陰で語られることのなかった市井の人々の名もなき物語を読み直しつつ、アートと社会のより密接な関わりを探ることはきわめて重要な課題ではないでしょうか。本展ではディン・Q・レの作品とユニークな活動を通して、私たちの過去と現在、そして未来について考えます。

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